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【アジアな目】国内空港の廃止なくして日本の航空会社の成長なし

小原篤次

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 香港のキャセイパシフィック航空、シンガポール航空、韓国航空は、ビジネス需要、航空貨物などアジアの景気回復の恩恵を受けている(リンク1)。

 キャセイ航空は2010年上半期(1~6月)決算で、総売上高が前年同期比33・7%増で、一株あたりの利益は前年同期を8・4倍に拡大した。同航空では2013年までに、新たな航空機の導入や香港国際空港に建設中の航空貨物ターミナル、地上および機内プロダクトのグレードアップなど設備投資も進める方針だ。

 従業員に対しては、ボーナスも前払いにするという。同航空は、アジアの金融センター香港を拠点とするだけに、2008年のリーマン・ショック直後から、大幅なコスト削減を迅速に実施し、売り上げの回復に備えてきた。航空会社のコスト削減は続いている。シンガポール航空は、燃費向上のため、機内誌を廃止する(リンク2)。

 航空会社を分析する上で、コスト面で航空機の調達費用、燃料費、そして売り上げでは、ファーストクラス、ビジネスクラスを中心とするビジネス客や航空貨物の利用状況が重要である。例えば、キャセイ航空の旅客利用率は2010年1~7月の累計で、84・6%、貨物重量利用率は77・7%まで回復している。

 一方、日本航空の旅客利用率は4~6月の累計で、国内58・0%、国際線72・1%、全日本航空は4―7月の累計で、国内62・3%、国際線78・3%にとどまっている。

 国内には100カ所近い空港がある。両社とも、国内線の利用率は国際線より低く、国内線をさらに再編すれば、業績が向上する可能性がある。この点は空港整備や維持費用も同じだ。

 地方空港や路線を維持するため、着陸料の減額など公的支援が必要で、成田、羽田などアジアと競合する国際空港への機動的な財源の配分の障害となっている。成田、関西、中部の着陸料はアジアの2倍の水準だ。(リンク3)。

 官民とも選択と集中が緊急の課題である。選択と集中には、地方空港の統廃合も含めるべきだろう。

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