メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

雇用対策は難しいのか?

武田洋子

武田洋子 三菱総合研究所チーフエコノミスト

 一国の総理大臣にとって、雇用を増やすことは、実はお安いご用だ。

 失業者全員を公共事業に従事させ、給与全額を税によって支払えばよい。

 ケインズがいみじくも言ったように「穴を掘ってただ埋める」事業に失業者を投入し、政府が給与を支払えばよい。「公共事業」は思いのままだ。つまり誰でも分かることだが、単に雇用を増やしたいだけなら、失業者全員を公務員にすればよい。

 しかし、それが国民の期待に応えることになのか。税金で給与をもらう公務員を増やすということは、国民にとって自分の財布からお金を取り出し、自分で給与をもらった「気持ちになる」ことを意味している。それでは「雇用の問題」が解決したことにはならない。

 つまり、雇用を生み出すというこというは、いかにして利益が上がるビジネス・チャンスを民間部門で創り出していくか、ということに他ならない。企業が収益機会をみつけビジネスを進めていく中で、自ら望んで雇用を増やす――少なくとも減らさない経済状況を創り出すために、政治と政策に何ができるか、それが問われている。

 常識的に考えれば分かることだが、「商売繁盛」こそ、雇用拡大の源だ。

 もちろん、商売が繁盛しても「私腹を肥やす」だけで従業員にお金を回さない悪徳商人もいるかも知れないが、それはまた別の問題だ。商売が繁盛していないのに、従業員を増やしたり給料を上げたりできるわけがない。

 ではどうすれば商売が繁盛するか。それが分かっているのならば、政治家や役人も自分の資金で儲かる商売をしているはずだ。だから、政府に「税金で」商売をやらせてはいけない。

 発想を逆転させる必要がある。

・・・ログインして読む
(残り:約1399文字/本文:約2081文字)