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平坦ではない「新プラザ合意」への道

藤井英彦

藤井英彦 株式会社日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト

 為替調整の議論が盛り上がっている。背景にはアメリカ経済の低迷がある。まず2008年2月に打ち出された8千億ドルに上る景気対策効果の一巡だ。アメリカ議会予算局によれば、景気対策の効果は本年央以降、減衰に転じ、景気押下げに作用し始めた。しかし、軟調な雇用情勢に象徴される通り、民需が点火する兆しは依然としてみられない。内需に頼れず、先行き懸念が広がるなか、外需指向、すなわち、景気を支えるために一段の輸出増加が必要だとする動きが強まった。

 とりわけ、中国人民元の見直しが焦点となっている。そうしたなか、貿易統計が10月14日に発表された。その結果、今後、人民元見直し論が一層強まる公算が大きい。最新の本年8月実績によれば、中国からの輸入が353億ドルと過去最大となり、対中赤字が280億ドルと既往最大となったからだ。なお、すでに9月分まで発表されている中国の貿易統計によれば、9月の対米黒字は8月と同水準だ。対中赤字がホット・イシューから外れる可能性は小さい。

 プラザ合意前夜と相似した情勢になってきた。当時、1980年代に入ってアメリカが産業空洞化が進行して先行き不透明感が強まり、大幅な貿易・財政赤字に陥る一方、とりわけ日独が巨額の貿易黒字を計上するなか、1985年9月、先進各国がドル安政策に合意した。

 しかし今回、新たなプラザ合意が早急に形成されるか否か予断を許さない。

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