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ギリシャ危機の本質は為替問題

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 ギリシャの財政悪化から始まった欧州の国債危機、アメリカの債務上限を巡る民主党と共和党の対立による米国の国債危機が世界的な信用危機になる可能性がある。ユーロ圏諸国がギリシャに支援し、米国で与野党の妥協が成立することで、危機は避けられると思われるが、そもそもなぜこのような危機が起きるのだろうか。

◇アルゼンチンの危機対応◇

 米国の危機は、経済問題というより、与野党間の政治問題である。しかし、政治問題が経済問題になる可能性はある。欧州の危機は、財政問題である以上に、金融政策と為替政策の問題である。ギリシャおよび南欧諸国の政府と民間が、ユーロの信用によって低い金利で資金を調達できたので、債務を膨らましすぎてしまったのが危機の出発点である。しかし、こんなことは中南米で何度でも起きている。2001年のアルゼンチン危機では、通貨が暴落して対外債務の自国通貨建てでの金額が膨らみ、到底返せない状況になった。そこでアルゼンチンは、貸主と交渉し、債務削減に成功した。同時に、通貨が暴落したので、輸出競争力が高まり、外貨を稼げるようになった。アルゼンチンは、削減された債務を返すとともに、輸出増加で景気回復が続いている。

 ギリシャがユーロに加盟していなければ、通貨が下がって、ドイツ人にとってのギリシャの物価が安くなり、ドイツの観光客が押し寄せただろう。北アフリカの政情不安もギリシャの観光業に有利な条件だ。債務をカットしてもらえば、ギリシャは外貨を稼げるようになり、減額された対外債務を返却できる。

◇解決策は債務カット、通貨下落、資本注入◇

 解決策は債務カットと通貨下落だ。ところが、

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