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円レートは構造ではなく金融政策で決まる

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

◇円レートは通貨と通貨の交換比率◇

金融政策決定会合後、会見する日本銀行の白川方明総裁=8月4日午後4時12分、東京都中央区、林敏行撮影
 円が上昇している。このような時、円高という歴史的、構造的変化に、小手先ではない抜本的な対応しなければならないなどという議論が盛んになるが、まったくの誤りである。円高とは、円という通貨とドルなど他の国の通貨との交換比率において、円の価値が高くなるということである。

 どんなものでも供給を増やせば価格が下がり、減らせば上がる。通貨も同じである。歴史的でも構造的でもなんでもない。これはハリー・ジョンソン、ジェフリー・フランケルなどの経済学者が1970年代に、厳密に示したことである。現日本銀行総裁の白川方明氏も、このことを、30年以上も前になるが、両氏の論文を引用しながら認めている(白川方明「マネタリー・アプローチについて」『金融研究資料』第3号、1979年8月)。

 図1は、中央銀行が直接コントロールできる通貨、マネタリーベースのアメリカの値に対する日本の値を指数化したもの(1988年1月=100)と円/ドル・レートを示したものである。基本的アイデアはジョンソン教授とフランケル教授にあるが、近年、伝説の投機家ジョージ・ソロス氏が使っているとされたことによって、この図はソロス・チャートと呼ばれる。

 に見るように、ドルに対して円の供給が増えれば円安になり(円/ドル・レートなので値が大きくなるのが円安である)、減れば円高になる。もちろん、

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