メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ビジョンなくして農業は強くならない

青山浩子

青山浩子 農業ジャーナリスト

宮城・石巻市内の水田の様子。生育は平年並みだという=8月2日
 農家が大勢集まったある会合で若手農家が農水省の役人に質問した。「国は農業をこの先どの方向に進めようとしているのですか」

 役人は「ひとつは戸別所得補償制度。もうひとつは6次産業化。これらの施策を通じ担い手の支援をしてまいります」と答えた。

 農家はこういう答えを期待していなかったと思う。日本の農業が生き残るためのビジョン、展望を聞きたかったはずだ。役人が答えたのは手段だった。

 民主党のマニフェスト(2010年)には「農林水産業を再生し、食料自給率向上と食の安全確保を実現します。農林水産業を成長産業と位置付けて従来の政策の抜本的な見直しに引き続き取り組みます」とある。

 確かにこの通りかもしれないが、これを読んで農家は「10年後、20年後に日本の農業は素晴らしい産業になりそうだ」と思うだろうか。胸が高鳴るだろうか。

 ビジョンや戦略の不在。ここが農政の大きな課題ではないかと思う。

 一方、生産や流通の現場ではこうしたビジョンを掲げ、新たな農業や流通を切り開こうとする動きがある。

 野菜の仲卸業者、デリカフーズ㈱の舘本勲武社長はある講演会で「国民の医療費削減につながる農業や食産業を創ろう」と激を飛ばした。

 舘本社長によると、

・・・ログインして読む
(残り:約1477文字/本文:約1990文字)