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岩波書店、いま「縁故採用宣言」のなぜ

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 岩波書店は2013年度募集要項で、「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」と明記した。共同通信(電子版)によると、同担当者は縁故採用を正面からうたった理由を「出版不況もあり、採用にかける時間や費用を削減するため」と説明している。

共同通信

http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012020201001572.html

岩波書店

http://www.iwanami.co.jp/company/teiki2013.pdf

 久しぶりに同書店の月刊雑誌『世界』を手にしていたとき、このニュースに触れた。「機会不平等」、「仕方ない」。いろいろ考えさせられる。就活生の人気企業にあがる総合商社や金融機関などの採用担当者や、採用活動をリクルーターとして補佐する若手社員らは、どう受けとめているのだろう。

 『雇用破綻最前線 : 雇い止め・派遣切り・条件切り下げ』、『雇用連帯社会:脱土建国家の公共事業』、『平成不況の本質:雇用と金融から考える』、『ルポ職場流産:雇用崩壊後の妊娠・出産・育児』、『最低所得保障』。岩波書店が出版している雇用関係の書籍のタイトルだ。リベラルを看板にする出版社が、なぜ縁故方式を「宣言」したのだろうか。採用に手間をかけられない、つまり「採用をめぐる費用対効果」の観点による判断か。市場原理主義は言い過ぎとしても、経済合理性を重視する姿勢を鮮明にしたということなのだろうか。

 岩波書店の社員数は200名、国立国会図書館のデータベースによると、

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