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「船中八策」は格差拡大・福祉後退の路線か?

小此木潔 ジャーナリスト、元上智大学教授

 大阪維新の会がまとめた衆院選向けの公約集「船中八策」の骨格をながめると、目くらましのように派手なスローガンが目立つ。「ぶっ壊す」と「改革」を叫んだ小泉純一郎氏をほうふつとさせるものもあれば、「官僚から政治を取り戻す」といったトーンで政権交代を実現した小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏らが輝いていた頃の手口をも思い出す。

 正直言って「またか」である。大風呂敷が大きければ大きいほど、「やらせてみないと値打ちは判断できない」という気になるから、筆者を含む日本の有権者はあまりにも乗せられやすい。しかし実際にやらせてみたら、どうなるか。政策の具体化はこれからだというから、意見を言うのも時期尚早の感すらある。

 だが、少なくとも今後、まともに説明責任を果たしてもらうためにも(民主党はここをいいかげんにしたまま政権をとったが)、おおいに疑問とせざるをえない点を、社会保障や経済の分野で、まず指摘しておきたい。

 まずたとえば、「年金を掛け捨て制と積み立て制の併用に」というが、それはどういう政策効果を目的にしているのか。基本理念が見えないままでは、富裕層に厳しくするだけなのか、中間層にも厳しい制度なのか、そもそも低所得層すら現在に比べてほんとうに事態が改善されるのか、が見えてこない。ひょっとするとここで言いたいのは公的年金制度そのものの廃止といってよいほどの「年金の縮小」ではないだろうか。

 かりに年金給付を縮小すれば、負担は減る。でも、それで良かった良かった、となるはずがない。給付も負担も同時に縮小するなら、基本は自己責任の徹底というスローガンのもとで、社会保障を貧弱なものにしてしまうということではないか。

 端的に言おう。

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