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松下政経塾内閣で大丈夫なのか

榊原英資

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 消費税問題をめぐって民主党が逆走している。増税の閣議決定をしたあと、小沢系議員の役職辞任などが相次いでいるのだ。中長期的に考えれば消費税増税は避けて通れない。40兆円前後の税収で約90兆円の歳出を中長期的にファイナンスすることが困難なのは誰の目にも明らかだ。ただ問題はタイミングだ。

 野田佳彦総理は消費税増税を当面の最重要課題としてそのスケジュールを策定し、これを強行しようとしている。

 しかし日本経済は、2011年度は震災と津波の影響で恐らくマイナス成長。2012年度の景気回復も日銀短観などによると、必ずしも順調に進むとは予測できない。経済政策上は、こういうときは増税よりもむしろ減税が望ましい。現在の財政状況では減税は難しいだろうが、当面は国債発行で景気回復に努め、回復後に増税というのが常識的な順序というものだろう。

 野田総理はどうも原理原則にこだわりすぎるようだ。確かに中長期的には増税は必要だし、その原理原則をしっかり持っていることは大切なことだろう。しかし、政治は応用動作が重要だ。いつもど真ん中の直球ではどこかで肩を壊すか、狙いをつけて長打を打たれてしまう。時にはカーブもスローボールも必要だ。

 現在の内閣は総理、外務大臣、政調会長など、主要閣僚や党の中枢が松下政経塾出身。別に政経塾だから悪いというわけではないが、若いときから政治家を目指し、政経塾から県会議員などを経て、国会議員、そして閣僚や総理というコースが定着してきている。

 政治一筋が必ずしも問題というのではないが、民間企業や行政の経験も全くなく、またそうした分野での人脈もない。かつての総理たちは民間、あるいは行政の経験を持った人たちが多かった。池田勇人は大蔵次官、田中角栄は自ら企業をマネージしていた。

 これに対し、政経塾出身の政治家たちは選挙や演説のプロではあるが、

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