メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

サルコジ敗北こそ社会民主主義への第一歩

森永卓郎

森永卓郎 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

 フランス大統領選挙で現職のサルコジ大統領が敗北した。日本の大手メディアは、ドイツとフランスが主導してきた財政緊縮による欧州債務危機脱却の枠組みが崩れ、再びユーロ圏が不安定になって、日本経済にも悪影響が及ぶと報じている。

 しかし、私はそうは思わない。サルコジ敗北こそ、この10年間欧州が歩んできた新自由主義化の流れを切り返し、欧州が再び社会民主主義の道を歩み始める第一歩になるのだと思う。

 もともと欧州の大部分の国は中道左派が支配する社会民主主義、すなわち高福祉・高負担の経済社会を作っていた。それは1979年にイギリスでサッチャー政権が誕生して、アメリカとともに新自由主義政策へと大きく舵を切っても、さほど変わらなかった。

 大きな変化が訪れたのは、2000年前後のことだった。1999年までEU15カ国中12カ国で政権を握っていた中道左派政権が2002年には6カ国に半減し、中道右派政権が過半数に達するようになった。この右傾化の流れの最終決定打となったのが2007年にフランス大統領選挙で勝利したニコラ・サルコジの就任だった。

 「もっと働き、もっと稼ごう」というのがサルコジのキャッチフレーズだった。市場競争を重視するサルコジは、もともと小さな政府への志向を持っていたが、それを先鋭化させたのが、欧州債務危機以降の財政緊縮策だった。しかし、サルコジの新自由主義政策はフランス経済をよくしなかった。失業率は2桁に上昇し、若者は仕事を奪われた。

 これに対して、オランド新大統領は、

・・・ログインして読む
(残り:約717文字/本文:約1356文字)