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動揺する欧州政治とマーケット

藤井英彦 株式会社日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト

 欧州が揺れている。4月末、オランダの連立政権が崩壊した。さらに5月に入るとフランス大統領選でサルコジ氏が敗北した。ギリシャでは総選挙で与党が過半数割れとなったうえ、連立協議が決裂して再選挙が決まった。

 いずれも緊縮財政に対する国民の反発が導火線になった。しかし政策変更は財政リスクの再燃に繋がる。ギリシャが再選挙でユーロ離脱に進めば、先行き懸念が急速に増大しよう。今後の行方をどのようにみればよいか。

  まずギリシャ経済の規模だ。本年4月のIMF(国際通貨基金)見通しによれば、本年のGDP(国内総生産)は2,711億ドルだ。GDP総額17兆ドルのEUのなかで1.6%にとどまり、フランスの10分の1、ドイツの13分の1に過ぎない。仮に離脱してもダメージは限定的だ。

 ギリシャの債務問題を指摘する向きもある。広く海外で保有され、欧州主要各国からみれば金融リスクになるからだ。もっともECB(欧州中央銀行)は、昨年末来の流動性供給策をはじめ、市場安定化に向け積極的なスタンスを鮮明に打ち出している。ハードランディングに直面する懸念は小さい。

 一方、プラス効果もある。ユーロ安だ。1月半ば以降のユーロ高は、先週末のギリシャ・フランス選挙で反転し、再びユーロ安が進行し始めた。欧州経済では少子高齢化が進み、域内市場の力強い拡大は期待しにくい。焦点とされた成長戦略も、研究開発や高度人材の育成をはじめ多くは中長期対策であり、短期的効果は乏しい。

 手っ取り早く景気を浮揚させる打ち出の小槌が通貨安を梃子にした輸出増だ。税収が増えれば、不人気な緊縮財政を緩め、時間をかけて財政の健全化を図り欧州統合を進めることが出来る。

 それに対し、

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