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電力会社が原発にこだわるのは総括原価主義を守るためだ

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

総括原価主義さえあれば利益が上がる

 電力会社は原発再稼働に熱心だが、なぜ熱心なのだろうか。原発で利益が上がるからだと多くの人は答えるだろうが、政府がコストに利益を乗せて電力料金を決めてくれる総括原価主義を採用してくれている限り、利益は必ず上がる。原発と利益とは本来は関係がない。

 電力会社は、あれだけの大事故を起こした割には大した責任を取らなくても良いようだが、それにしても経営者はクビになり(どこか目立たないところで面倒を見てもらっているのかもしれないが)、従業員の賃金は下がり、福利厚生費も削られた。関連会社への天下りも減り、企業年金も削られるだろう。

 普通に考える限り、原発は企業(その経営者と従業員)にとって割が合わない。現に、総括原価主義がなく、電力市場も競争的なアメリカでは、1996年以降、原発は建設されていない。

 もちろん、この夏を乗り切るために原発の再稼働が必要だというのは分かる。また、来年の夏も大変だというのも分かる。おそらく、今年の冬も来年の冬も大変なのだろう。しかし、大変になる大きな理由は火力発電所を新たに造らなかったからだ。これまでの老巧化した設備を入れ替えるだけなら、新たな土地買収も地元対策も必要ない。再稼働の難しい原発の近くに造れば、地元の雇用対策にもなり、歓迎されるだろう。なぜ、電力会社は火力発電所を造らず原発に拘るのか。

原発があるから総括原価主義が維持できる

 この謎を解くカギは、総括原価主義と原発が結びついていると考えることだ。電力会社の力は、配電網と原発を持っていることから生まれる。新しい会社が、今から電柱を建てて家庭に電気を売ることは不可能だ。しかし、政府が発電と配電を分離せよと言えば、分離されてしまうかもしれない。現に、日本以外のほとんどの先進国では分離されている。

 原発はどうだろうか。総括原価主義がなければ、

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