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計画停電より夏休み民族大移動の勧め

小原篤次

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 電力需要が伸びる時期に入った。夏季は、オフィスや工場などで冷房需要が拡大する午後2時~午後3時がピークとなる。東日本大震災直後の昨夏、官民一体になった節電ムードから、供給体制を中心とするまるで「平時のような議論」に逆戻りし始めている。

福島第1事故は終わっていない

 1999年に茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で臨界事故が起き、臨界事故で複数の死者を出した。世界最悪原発事故のチェルノブイリ事故にも匹敵する東京電力福島第1原発事故後の対応は現在進行形である。猛暑の中、協力企業の作業員らは、炉心溶融(メルトダウン)を伴った福島第一原発で廃炉に向けて、高線量環境下での作業を続けている。7月30日に更新された廃炉工程表(政府と東京電力が作成)では、(1)燃料貯蔵プールからの燃料取り出し開始、(2)原子炉からの燃料取り出し開始、(3)廃炉終了まで-の3つの期に分類され、第1期は2年以内、第2期は10年以内、原子炉と建屋の解体が終わる第3期は30~40年後の達成を目標に掲げている。

 40年は長い。現在の大学生が定年を迎える頃まで、依然、異常な事態にあるわけだ。

 各種報道によると、東京電力が公表したアンケートでは、福島第1原発で働く協力企業の作業員らの62%が現場環境について不満を示している。食事について「内部被ばくが不安なので改善してほしい」、現場環境では「放射線量・汚染を下げてほしい」、「現場に線量表示計を設置してほしい」、「熱中症対策を徹底してほしい」といった切実な声が寄せられたという。

アジサイ革命の次に期待

 関西電力大飯原発3号機再稼動決定を受けて、脱原発デモが官邸、国会や霞ヶ関周辺で続き、広がりを見せている。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを通じて脱原発運動が起きていることを評価する向きがあるが、今後、どういった方向に行動が向かうのだろうか。そのことが重要である。インターネット時代の市民や若者が、北アフリカのジャスミン革命と比べられ、現在の「アジサイ革命」に満足しているようでは、21世紀の成熟国家やその市民と言えまい。

 理想選挙を実践した女性政治家、市川房枝の時代には、東京電力に対して1円不払い運動があった。1970年代のオイルショックのインフレ時代で、東京電力の電気料金のうち1円を政治献金に相当するとして、1円だけ払い込みを減らすことにより、政治献金廃止を求めた動きだった。そのためには、電気料金の自動振り込みをやめる必要があった。市村 孝二巳「東電の値上げを止められる政治家の力」『日経ビジネスオンライン』が詳しい。http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120309/229652/?P=1

 円高の今、海外にまで目を向ければ、関東や西日本などの都市部より涼しく過ごせる場所は少なくない。日本なら北海道、信州は避暑地に最適である。大企業は、避暑と大震災のBCP(事業継続計画)の演習を兼ねて、役職者が一時東京を離れるのも一案だろう。今夏、電力不足が懸念される西日本でも、過疎に悩む離島や中山間地の山村留学に参加する方法もある。過疎化で廃校になった学校や古民家の活用にもなる。

 そうバカンスであれば、沖縄などビーチリゾートの蒸し暑さも気にならないだろう。夏季の民族大移動は、省エネルギーのほか、子どもの成長を確認する瞬間にもしたい。少子化対策でもある。学生たちには夏休みに読破したい課題図書リストを手渡したうえで、ユーロ安の欧州旅行を勧めている。

脱原発解散もおもしろい

 日本ではオイルショックの際、節電のためテレビ放送の放送を一時休止した。広告収入の減少につながると恐れずに、各局が制作に関わる夏休みの邦画の客足が増加するかもしれない。いやテレビ局は、放送を中止せずにメディアの役割を示す絶好のチャンスかもしれない。テレビ局が「夏休み子ども節電相談番組」を企画したり、オフィスや家庭の節電キャンペーンを展開する。高校野球関係者は「なぜ真夏の甲子園なのか」。その意義を議論して公表するだけでも、東日本大震災支援につながるのだろう。日本の人気スポーツは野球から確実にサッカーに移っている。高校野球も相撲のように、時代の空気を読めてないと言われないようにしたい。

 政府は、エネルギー・環境政策に関する意見聴取会を開いている。同会議が提示した原発比率が議論の中心である。早期全廃を目指す0%、「40年廃炉」ルールを順次進める15%、原発の新増設を伴う20~25%の3案からなる。この問題を国民投票にかけるわけではない。最終的には政府が政治的に決断するしかない。支持率が低下する民主党の起死回生策は「脱原発解散」なのかもしれない。

 せっかく誕生した民主党政権が「見える政策形成」を重視するなら、電力需要ピークのカット方法や大胆な節電方法の提案を国民に呼びかける方が、原発比率の意見聴取よりも建設的な気がしてならない。

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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

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