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波立つ韓中との関係、リーダー交代が転機になる

木代泰之

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 女子サッカーの日韓戦が国立競技場で行われた8月30日、日本サポーター席の一角で旭日旗が振られた。第二次大戦中に軍旗として使われた旭日旗は、韓国では日本の植民地主義の象徴と見なされる。案の上、翌日の朝鮮日報は旭日旗への嫌悪感や、緊張に包まれた国際サッカー連盟(FIFA)の様子を、負けた試合の内容より詳しく伝えていた。

 同じ日の紙面には「デンソー、昌原に大規模投資」という記事が載っていた。デンソーが韓国南部の昌原市に自動車部品工場を建設することになり、調印式が行われた。昌原市役所は許認可から工場稼働まで手厚く支援しようと、デンソーのために特別のワンストップ作業チームを結成したと、その歓迎ぶりを伝えた。

 一見、支離滅裂のようだが、そうではない。嫌悪と歓迎という二つの異なる感情が双方に並立するのが今の日韓関係の現実である。

 日本企業の韓国進出はこの2、3年、奔流のような勢いだ。2011年の韓国への投資は552件、22億4900万ドル(1800億円)で、8年前の4倍以上に増えた。東レ、旭硝子、横浜タイヤ、三菱化学などの製造業だけでなく、キリン、ライオン、ユニクロ、100円ショップのダイソーまで多彩に進出している。

 理由は明快で、一つはそこに市場があるからだ。日本メーカーはサムスンや現代自動車に部品や素材を多く納入しており、その要望に迅速に応えるには地理上の近さが必要だ。二つ目は日本の「6重苦」が軽減されること。電力料金は半分、法人税率は6割ほどだ。3つ目は韓国がFTA(自由貿易協定)を結んでいる米国やEUへの輸出が有利になること、しかもウォン安である。

 韓国の産業は大企業と零細企業に二極化していて、その間を埋める部品・素材産業が育っていない。そこを日本からの輸入に頼っているので、韓国が輸出で稼ぐほど日本がもうかる構造になっている。だから日本企業の進出は大歓迎なのだ。

 李明博大統領の大企業優遇策は、輸出企業を利する反面、極端なウォン安誘導によって物価高や家計債務の増加、消費低迷を招いた。若年層の失業率も高い。朝鮮日報は、不況のせいで性的サービスを職業にする若い女性が大量に海外に出かけ、韓国の恥をさらしていると嘆いた。

 韓国では12月に大統領選挙があり、

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