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カモにされたパナソニック

大鹿靖明 ジャーナリスト・ノンフィクション作家(朝日新聞編集委員)

 パナソニックは2013年3月期決算で最終損益が7650億円もの赤字になる見通しを発表したが、きっと高笑いしているのはゴールドマン・サックスだろう。今回のパナソニックの巨額赤字の要因は、高値で買収した三洋電機の価値の目減りに伴うものだが、高く売りつけたのがゴールドマンだったからである。

 三洋電機は、新潟県中越沖地震によって新潟県小千谷市にあった半導体の主力工場が壊滅的な打撃を受けたのを機に業績が悪化し、新規設備投資やリストラ費用として5500億円のニューマネーの調達が必要になった。同社はこのうち3000億円を第三者割当増資によって得ることにし、2006年3月、大和証券SMBC、ゴールドマン・サックス、それに三井住友銀行を引受先に新株を発行した。

 三洋はメーンバンクの三井住友に資金調達を頼り、三井住友は自分の「お仲間」たち――当時は資本関係のあった親密証券会社の大和と、西川善文元頭取と個人的なつながりが太い持田昌典が日本法人社長を務めるゴールドマンを誘った。かくして大和とゴールドマンが各1250億円、三井住友が500億円を払い込んでいる。このとき三洋の株は1株70円で売られている。

 ゴールドマンでディールをまとめたのが、日本語ぺらぺらのインド人、アンクル・サフ氏だった。米タフツ大電子工学科卒という理系出身で、その後ハーバード大で経営学修士(MBA)を取得。1998年に米ゴールドマン本社に入り、ちょうどこのときはプリンシパル・インベストメントの日本エリアの統括として、東京・六本木ヒルズに本社をおくゴールドマンの日本法人にいた。当時はまだ36歳だった。

 プリンシパル・インベストメントとは、

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