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新政権への期待~金融緩和の成功がもたらす求心力で構造改革を~

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 選挙結果は予想通りの自民党大勝で、自公両党を主軸とした政権が発足する。参議院では自公両党を足しても過半数にはならないので、部分ごとには他党との連携がなされるだろうが、ともかく、自公両党を中心とした政権になることは変わらない。

 次の総理が確実な安倍晋三自民党総裁は、選挙戦を通じて、一貫して大胆な金融緩和を訴え続けてきた。少なからぬ経済学者、エコノミスト、日銀官僚が反対意見を述べていたが、安倍氏は実行するだろう。選挙戦であれだけ熱心に訴えていたことを実現できないとなれば、すぐさま、その実行力が疑問視され、政権への求心力が低下してしまう。

取るに足りない反対派の意見

 これら反対派の意見は取るに足りないものだ。彼らは、2~3%のインフレ目標を設定して大胆な金融緩和を行えば、ハイパーインフレになるという。しかし、2~3%のインフレ目標とは、それ以下でもそれ以上でもダメという目標である。3%を超えたら金融を引締めるという目標でもある。

 それでなんでハイパーインフレになるのか、真面目に検討するにも及ばない議論だ(金融緩和反対論への私の反論は、WEBRONZAの金融政策がどのように作用するか理解しない人たち」(2012/11/30)、「中央銀行の独立より金融政策のルール化こそ望ましい」(2012/11/26)、「デフレ脱却を実現できるのは日銀だけである」(2012/11/12)などにある)。

 領土問題は相手のあることですぐさま解決できるような話ではない。安全保障もそうだ。自衛力を高めるには予算が要るが、その増額に反対する議員も多い。社会保障改革は必要だが、とんでもない増税か、社会保障給付費の大幅な削減が必要になる。選挙戦でも、各党が議論したがらなかったテーマだ。

 TPP交渉参加にも農業団体の反対がある。金融緩和に反対している人々の力が一番弱い。公明党も特に反対しないだろうし、民主党、みんな、維新の会にも、金融緩和に賛同していた議員は多い(政治的駆け引きで、昔、賛同していたからといって、自公政権になっても賛同するかどうかは分からない)。金融緩和も出来なければ、他のどの政策も実行できないだろう。しかも、この一番簡単な政策を行うことが求心力を生む。

簡単な政策から始めるのが一番良い

 金融緩和によって円高が収まる。輸出が増加し、輸出企業の採算が改善し、リストラをしなくてすむようになる。これ以上円高にならないと企業が確信すれば、雇用を増やし、さらには投資も増大させるだろう。中国投資への不安と投資対象国のインフラ不足、賃金上昇への懸念が、国内での投資を後押しする。雇用が増えれば、

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