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世界一になる夢を潰えさせたか、中国の重篤スモッグ

団藤保晴

 米国を抜いてGDP世界一になる中国の夢が、2013年年明け早々、北京から内陸部まで33都市を覆った観測史上最悪の有毒スモッグで潰え去ったと観てよさそうだ。この10年間、資源とエネルギーの猛烈な浪費で経済を膨張させてきた中国に、いずれ地球上にある資源量の限界が立ちはだかると考えてきたが、その前に中国国民に耐え難い大気汚染が顕在化した。汚染は環境基準値を超えた、超えないのレベルではない。北京市当局が定めた空気レベル指数表の天井を突破しているので、中国メディアがランク外、別格として「爆表」と呼ぶ凄まじさである。困ったことに汚染は海を越えて日本にも飛来している。

 中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」日本語版の評論「濃霧が警告 経済モデル転換は引き延ばしできない」は《深刻な濃霧は、中国の経済成長モデルがもはや維持できないことを改めて示している。過去30数年にわたり、中国は「高汚染、高エネルギー消費、汚染物資の高排出」という「3高」の成長モデルによりかかり、一部の地域ではGDPを無計画に追求して環境保護に配慮してこなかった。このため今になって経済成長の苦い果実を味わっている》と驚くほど率直に「3高」成長への反省を表明している。

 有毒スモッグの主役は「PM2.5」と呼ばれ、粒径が2.5マイクロメートル以下の汚染物質だ。この微小粒子は肺の奥の奥、肺胞まで入り込み、そこから呼吸器系ばかりでなく循環器系や免疫系にも影響を及ぼすと考えられる。数日の短期曝露でも死亡率に響き、長期の曝露なら全死亡数、呼吸器・循環器死亡、肺がん死亡との関連性が観察されている。

 中国は石炭の消費が多く、石炭火力発電や都市暖房で燃やされているのが一方の原因と考えられている。もう一つ見逃せない主因が、次のような無謀なほどの自動車販売台数増加だ。

  2008年  900万台

  2009年  1300万台

  2010年  1800万台

  2011年  1800万台

  2012年  2000万台以上

 2008年の北京五輪でも大気汚染が懸念されて、選手生命を損ないたくない有力アスリートが出場を辞退する騒ぎになっていた。その時、北京市内では多くの工場を停止させ、クルマのナンバープレートが偶数か奇数かで運転できる日を決めた。つまりクルマの半分を強制停止させて乗り切ったのだ。2009年以降、何の手も打たないで7千万台もクルマを増やせば、環境への負担は計り知れないものがあるのに、中国好みの「大躍進式」自動車産業発展は大歓迎されていた。これからスモッグを改善するとしたら、2013年にまた2000万台以上も売ってよいのだろうか。

 微粒子「PM2.5」の測定は難しいこともあって中国当局は長らく粒径が大きな「PM10」しか調べていなかった。2008年から米国は北京の大使館屋上で1時間に1回、「PM2.5」測定を開始、ツイッターで測定値に合わせたコメントを付けて流している。「Very Unhealthy」(超不健康)や「Hazardous」(有害・危険)などの恐ろしいコメント続出に、危険度が低い「PM10」のデータしか持たない中国当局は「そんなはずはない。あれは濃霧であって、スモッグではない」と抗弁していた。

 米国大使館と中国当局、どちらが環境対策に正統か、決着をつけたのは市民だった。ネット上での大使館支持優勢は明らかだし、

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