メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

国債価格の暴落をいかに防ぐか

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 安倍晋三総理の唱える大胆な金融緩和で(実際にはまだ大胆というほどの緩和をしていないが、その掛け声だけで)、円安、株高となっている。超円高で工場閉鎖が続いた後で円安になっても、すぐさま輸出産業が新たに工場を建てたり、雇用を増やしたりすることにはならないが、工場閉鎖や人員整理を取りやめる企業が増えてくる。

 もっと前から金融緩和を行い、円高を阻止していれば、日本の電気産業の壊滅はなかった。天下のパナソニックが本年の天皇杯で優勝したバスケ部を廃止することなどなかっただろう。

 円安で原燃料価格が上がるのはマイナスだという人が多いが、円安で仕事が増えるプラスに比べれば、小さなマイナスでしかない。

 確かに、大胆な金融緩和で景気が上昇し、物価が上がれば、やがて金利も上昇する。金利が上昇すれば、国債の価格が下落する。国債の価格が下落すれば、国債を膨大に抱えている銀行の経営が危うくなり、日本は金融危機に陥る。大胆な金融緩和を行えば、かえって景気が悪化するという人がいるが、まったくの誤りである。

金利上昇は景気回復の結果

 金利が上がるのは、景気が回復し、物価が上がった結果である。景気と物価が回復すれば、株や土地が上がり、貸出先の経営状況も良くなっている。銀行は、国債だけを持っている訳ではない。銀行の持っている一番の資産は貸出債権である。貸出先の経営状況が良くなれば、貸出債権の価値は実質的に上昇する。株はすでに25%以上上昇した。銀行業全体、メガバンク、地銀の中位行以上では、様々な債権を組み合わせて、金利が上昇しても損失にならないように万全の対応策を採っている。

 もちろん、本欄「なぜ日銀はデフレ政策を続けているのか」(2013年01月04日)で述べたように、国債ばかりを持っていて、金利が上がると経営が悪化する銀行がないとは言えない。日銀高官があると言っているのだから、確かにあるのだろう。しかし、

・・・ログインして読む
(残り:約706文字/本文:約1506文字)