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黒田東彦総裁・岩田規久男副総裁はベストの選択~それでも必要な「日銀法改正」~

吉松崇 経済金融アナリスト

 安倍政権は2月24日、3月19日に退任する白川日銀総裁の後任に黒田東彦アジア開発銀行総裁を、また、2人の副総裁に、岩田規久男学習院大学教授と中曽宏日銀理事を起用する人事案を固めた。結論を先に述べれば、私は、中曽氏のことは良く知らないのでコメントできないが、黒田東彦総裁・岩田規久男副総裁という人事は、現状考え得る最良の人選ではないかと考えている。

 詳しくは、拙稿「次期日銀総裁には『政策レジームの転換』を体現できる人を!」(1月9日)をご覧いただきたいが、私の考える日銀首脳人事のポイントは、(1)日銀総裁・副総裁、そして審議委員は、その出身に関係なく、あくまでも、その個人の金融政策についての識見に基づいて判断されるべきであり、(2)過去に審議委員を経験した人については、審議委員としての実績・トラックレコードを吟味する必要がある、さらに(3)誰を選ぶにしても、日銀法の改正が必要である、以上の3点である。

これは「政策レジームの転換」を可能にする人事だ!

 この観点から今回の人事案を見ると、まず、第一に評価できることは、安倍首相が、過去のトラックレコードから、首相の望む金融政策の遂行に疑念をもたれる可能性のある人を、避けたことである。具体的には、総裁候補として取り沙汰された人のなかで、武藤敏郎氏、岩田一政氏、という二人の元日銀副総裁である。このお二人は、福井総裁時代の2006年3月の政策決定会合で、量的金融緩和の解除に賛成票を投じている。この2006年の量的緩和の解除が、日本経済のデフレ脱却を確認することなく行われた早過ぎた金融引締めであり、全くの失敗であったことは、今となっては確立した評価だといって過言ではない。だからこそ、「武藤氏が日銀総裁に決定」という噂が流れただけで、市場は円高・株安に振れた。市場参加者の候補者を見る目は厳しい。この点で、安倍首相は賢明であった。

 これに対し、黒田氏と岩田規久男氏は、1990年代以来、長い間、日銀の金融政策の持つデフレ・バイアスを一貫して批判してきたインフレ・ターゲティング導入論者である。日銀にとっては、言わばアウトサイダーの批判者である。現在、この人事でもっとも重要なことは、人々(市場参加者)が「この人なら、これまでの日銀の金融政策とは、全く異なる政策を実行してくれる」という予想(期待)を抱くようになることだ。つまり、デフレ・バイアスからインフレ・バイアスへの「政策レジームの大転換」である。私には、黒田氏と岩田規久男氏は、まさにこれを可能にするのにふさわしい人材であるように思われる(「政策レジームの転換」については、上述の拙稿をご参照頂きたい)。

 黒田氏については、財務省の出身であるところから、いずれ財務省に都合の良いように振舞うのではないか?という懸念を持つ人もいる。例えば、もともとインフレ・ターゲティングの導入に熱心なみんなの党は、財務省出身という理由で、黒田氏の総裁就任に反対している。しかし、財務官まで勤めて退官し、アジア開銀総裁の座に長くあった人が、いくら出身母体であるといっても、財務省の意向に唯々諾々と従うとは、私には到底思えない。黒田氏にとって、そのようなインセンティブはないだろう。

 黒田氏に対するもうひとつの批判は、 ・・・続きを読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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