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TPPは慎重に

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

 安倍晋三首相はTPPへの交渉参加を正式に表明したが、同時に「米国は一筋縄ではいかない。厳しい交渉になる」と農水族議員などに説明している。日米首脳会議で双方とも若干の例外を認めることをほぼ確認したことから安心感が広がっているが、そう単純な話ではないと思われる。

 確かに関税の分野では日本はコメなど一部の農産物はアメリカの自動車とともに例外になるだろうし、日本の関税率は全品目ベースで4.9%(2009年)とアメリカの3.5%、EUの5.3%と並ぶ低いレベルにある。

 例外さえ認められればこれを相互にゼロに向けて削減することにそれほど大きな問題はないだろう。つまり関税に関する限りTPP交渉参加はマイナスにはならないだろうし、恐らく若干のプラスを日本全体にもたらすことになるのだろう。

 しかし問題は作業部会にあることがまだ広く認識されていない。作業部会は物品市場アクセス・サービス・電子商取引など広範な分野におよび、このひとつひとつについて参加国との交渉が行われることになる。

 過去の日米交渉などから推測すると、日本の公的金融(郵便貯金・簡易保険)、政府調達や公共事業、自動車のディーラーシップなどについてアメリカなどから強い要求が出てくることが予想される。

 また医療分野も重要な交渉分野のひとつ。米国通商代表部(USTR)は日本の皆保険制度については問題にしないと言っているが、

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