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日本はTPPに参加できないかも?

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 昨年12月11日のウェブロンザで私は「日本はもうTPPに入れない」と書いた。その大前提として、同月16日の衆議院選挙に勝つと予想される自民党政権は、今年夏の参議院選を前に、TPP参加を表明できないだろうという見通しがあった。

 

しかし、政権奪取後の安倍政権には、この見通しを大きく修正させるほどの勢いがあった。2月21日の総理訪米直前に書いた論文が「TPP参加でも自民党は参議院選挙で負けない」である。

 

 その見通しを基に、私は2月19日、ワシントンで、参議院選前のTPP参加表明はないとする米国の有力なシンクタンクのメンバーたちに対し、安倍総理はオバマ大統領からよい返事がもらえるなら、日本に帰り次第、間髪を入れずにTPP参加表明を行うはずだと主張した。(2月23日付ウェブロンザ「TPP日米共同宣言をワシントンで読み解く(上)」参照)事態は私が予想し、働きかけた通りとなった。

 

 しかし、3月15日の安倍総理の参加表明で、日本はTPPに入れないかもしれないという懸念がまた頭をもたげてきた。

 

 それは、交渉には相手方がいるからである。

 

 日本のメディアは日本の参加を当然のように考えている。しかし、米国政府は、日本の参加に対する自動車業界と連邦議会議員の反対をどうなだめるかに苦慮している。私は2月23日付「TPP日米共同宣言をワシントンで読み解く(下)」の中で、共同宣言の中の「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに2国間貿易上のセンシティビティがある」という表現について、「農産物について例外を日本に認めれば、米国は日本に対しては自動車の関税を撤廃しないという可能性があるように思われる。」と書いた。しかし、翌日自動車の関税に言及したのは、朝日新聞だけであった。このような合意がなされた後でも、米国の自動車業界の反対は収まっていない。

 

 さらに、事態を難しくさせているのは、自民党の農産物例外要求である。気の早い日本のメディアでは、交渉に参加した後で、農産物の例外品目を獲得できるかどうかという議論が展開されている。しかし、日本がTPP交渉に参加しようとすれば、

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