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日米欧先進経済圏の過剰な金融政策依存――山高ければ、谷深し

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 黒田総裁下の日本銀行が、今年4月初めにマネタリ―ベースを向こう2年間で約2倍に拡大する方針を表明してから、東京株式相場は上昇一色かに見えた。(もっとも、仔細に見れば、東証REIT指数などは、今年3月下旬をピークに、下落を続けていたが。)しかし、5月23日(木)には、日経平均株価(225種)は、13年ぶりの大幅下げを演じた。その翌日にも、東京株式市場の動揺は収まらなかった。この『急変』の原因について、様々な見解が喧しく展開されている。

 筆者が、この欄で、『米国、欧州などの先進経済圏のバブルの再々度の崩壊に備えよ』と書いたのは、昨年11月1日、『長期金利(国債利回り)の超長期低下局面も終わりが近い』と書いたのは、今年4月22日のことであった。いずれも、米国や欧州などの先進経済圏のインフレ率や、金利水準が、1980代初頭から超長期サイクルの下降局面にあることに着目した見解であった。

 この超長期サイクルの下降局面では、金利水準の低下に反比例し、株式、不動産などの資産価格が高騰・暴落することは新奇なことではない。産業革命が18世紀後半の英国で始まり、それが世界中に伝播する過程で、上昇・下降局面が約60年の周期の超長期サイクルが繰り返されて来た。その下降局面では、資産価格の高騰と、暴落による大恐慌、経済活動の大不況が繰り返されて来た。

 重要なのは、資産価格高騰・暴落(資産バブルの形成と破裂)が、単なる金融現象ではないと言うことである。金融現象の裏側には、実態的な経済活動の変化がある。

 超長期サイクルの下降局面で、先進経済圏で金利水準の低下傾向が見られると言うことは、資本の利潤率にも低下圧力が掛かっていると言う事である。換言すれば、超長期サイクルの上昇局面で、高度経済成長局面を経た先進経済圏では、下降局面では、資本を企業設備(資本ストック)の一層の増大などに投資しても、以前の上昇局面ほどには儲からなくなっていると言うことである。

 しかし、利潤率はゼロではないから、資本ストックを増大させる投資活動は続く。また、資本の所有者は、資本の利潤率を、何とか高めに維持しようと行動する事になる。したがって、資本ストックの水準が低く、賃金率も低くて、高い利潤率が見込める『新興経済圏』への投資を拡大する。

 先進経済圏自体の内部でも、買いが買いを呼び、資産価格が吊り上る投機的な活動が活発になる。極端な場合には、投機の対象は何でも良い訳である。歴史的には、オランダのチューリップ投機が、最近では、サブプライム証券への投機が有名である。マネーゲームが、実態のある財・サービスなどの富を生み出していると錯覚されている時期である。

 問題は、投資活動が先進経済圏から新興経済圏に拡大する過程で、

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