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アベノミクスと株価の関係を冷静に考える

吉松崇 経済金融アナリスト

 株式市場が乱高下している。 5月23日に、一時16,000円に届きそうだった日経平均株価指数がその後大きく売られて、この日の終値は14,483円と、一日で約1,500円もの値幅を記録した。その後も値動きは激しく、27日の終値は14,143円と、高値から約12%も下落している。短時間にこれほど大きく相場が動くと、多くの人が不安に駆られる。アベノミクスに批判的なメディアは、ここぞとばかり「アベノミクス、危うさ露呈」(5月24日付の朝日新聞)と書く。

 それでも現在の日経平均は、昨年11月の衆議院が解散した時点の8,660円と比べると63%、年初の10,600円からは33%、4月4日の黒田日銀による「異次元緩和」直前の12,000円からは18%ほど高い。ここは少し冷静になって、アベノミクスと株価の関係を考えてみたい。

何が株価を決めるのか?

 そもそも、或る会社の株価が或る水準で取引されるのは、買う人はその時点の株価が割安であると考え、売る人はその株価が割高であると考えるから取引が成立している。或る価格で割安だと考える人のほうが割高だと考える人より多ければ、その価格では全ての需要を消化しきれないので、価格が上昇する。ケインズのいう「美人投票」である。これはこれで真理であるが、これだけでは株価の変化を説明するのに全く役に立たない。

 きわめて抽象的だが、企業金融論では、或る会社の株式の時価総額、或いは株主価値の総額は、その会社の将来に亘る毎期の予想純利益を、その会社のリスクを反映した割引率で割り引いた「現在価値」であると考える。この時価総額、或いは将来利益の「現在価値」を、発行済み株式数で割ったものが株価である。(非現実的だが)もしも会社が永遠に継続するとすれば、会社の時価総額、つまり株主価値は、将来に亘る無限級数の総和である。

 例えば、或る会社の製品やサービスが大ヒットして、予想利益が将来に亘り今までの想定より大きくなると、「現在価値」もこれまでの想定より大きくなるので、株価は上昇する。一方で、製品・サービス競争で敗れた会社は、将来の予想利益が今までの想定より小さくなるので、「現在価値」が減少して株価が下落する。アップルとソニーを想起すれば理解しやすい。

 それでは、割引率は何で決まるのか? ひとつには、ビジネス固有のリスクである。例えば、 ・・・続きを読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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