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改革か既得権益か、首相が抱える根本的矛盾

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 アベノミクスが問われる参院選が続いている。アベノミクスは為替、株価、長期金利、雇用、賃金、企業収益などに多様なプラス・マイナスの影響があり、その評価は国民一人一人、どの立場に立つかによって変わってくる。

 そこで本稿では「第3の矢」として6月に発表された成長戦略(日本再興戦略と規制改革実施計画)について考えてみたい。世間には改革を断行すると期待したのに、裏切られたとの思いがある。痛みを伴う難問を避け、結局は昔ながらの「既得権益の存続を前提にした利害調整」でお茶を濁している。

大胆な「第3の矢」の行方

 首相やその周辺は当初、大胆な「第3の矢」の構想を立てていたようだ。たとえば農業改革について、甘利明担当相は当初、次のように語っていた。「農業を成長産業として捉え、様々な改革を試みたい。これからは攻めの農政に切り替え、輸出産業として対策を作る。農協も自己革新が必要だ。農家のための農協でなく、農協自身のための農協と一部で言われている」。

 農業改革のポイントは、民間企業が農地を自由に取得して農業経営できるようにするかどうかにあった。日本の農産品の品質や安全性の評価は高いので、民間の経営ノウハウを上手く導入すれば、世界の高所得層向けの輸出産業として期待できる。TPP(環太平洋経済連携協定)への対策にもなる。甘利発言を聞けば、「自民党もいよいよ本気か」と思ってしまう。

 ところが、案の定というか、

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