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「水素」に走る世界の自動車業界、EVは出番を間違えたか

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)が、水素燃料電池車(FCV)を共同開発することで提携した。トヨタはすでに独BMWと組み、電気自動車(EV)を販売する日産も独ダイムラー、米フォード・モータースと提携し、これで3陣営が走り出した。量産車が発売される2015~17年にどの陣営が性能と価格で先頭を切るか、将来のエコカー市場を賭けた勝負のときが迫っている。

FCVのメリットは多いが

 FCVは、燃料タンクに蓄えた水素に、空気中の酸素を反応させ、生み出された電気エネルギーでモーターを回して走る。自主路線を走っていたホンダの変身は世間を驚かせたが、エコカーの本命とされるFCVの開発は単独では投資負担が大きすぎることの裏返しでもある。

トヨタ自動車が提示するFCVのイメージ図 (同社WEBサイトより)拡大トヨタ自動車が提示するFCVのイメージ図 (同社WEBサイトより)

 FCVのメリットを並べると――

1.走行時に発生するのは水蒸気だけ(有害な排出ガスはゼロ)

2.エネルギー効率が高い(総合効率30%以上、ガソリン車の約2倍)

3.多様なエネルギー源が利用できる(水素は天然ガス、石油、石炭、再生可能エネルギーから製造可能)

4.騒音が少ない(電気化学反応で発電するので、騒音は低減)

5.短時間で水素燃料を充てんできる(EVのような長時間充電が不要)

 ガソリン車の燃費は、1リットル当たり30kmを超す車も現れているが、数10年もすれば石油資源そのものが枯渇する心配が出てくる。その時に備えて、「ガソリン社会」に変わる「水素社会」を一から作ろうという試みだ。

 FCVが完成しても、水素の製造装置や輸送システム、車に供給する水素ステーションの建設などの「水素のサプライチェーン」を整備しなければ、車は走れない。

 関係する業界は、自動車メーカー、トラック輸送、石油・ガス会社、建設会社、機械メーカー、IT企業など、実に多くの業界が参加する大変革になる。

課題多いインフラ整備

 水素ステーションは現在、実験的なステーションが全国に17か所あるが、最終的には全国に数千、数万か所が必要で、現在のガソリンスタンドに併設する案が有力だ。充てんに要する時間は約3分ですむ。

 走行距離は、トヨタは700気圧に圧縮した水素を用いて830km、ホンダは350気圧で620kmを実現している。普及のイメージとしては、2015年に初のFCV量産車を発売(日産は17年)。25年には約200万台が走り、ステーションは1000か所が整備され、その後、本格普及に進むという。

 むろん課題も多い。巨額の費用の調達や ・・・続きを読む
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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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