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ベゾスの才覚に賭けるワシントン・ポスト(中)

石川幸憲 在米ジャーナリスト

 米大手新聞は70年代に最盛期を迎えた。ニューヨーク・タイムズおよびワシントン・ポストは、国防総省のベトナム戦争についての極秘レポートを入手し、共に顧問弁護士の大反対を押し切ってその内容を一面で報道した。「ペンタゴンペーパーズ事件」と呼ばれる大スクープである。ベトナム反戦という世論を背にして、両紙は国家権力に立ち向かい「読者の知る権利」を楯にして報道の自由を実践した。

 ワシントン・ポストはその後、米民主党本部への不審な侵入者の逮捕をきっかけに現職大統領の辞任へと発展するウォーターゲート事件の主戦場になり、世界的なメディアへと躍進する。キャサリン・グラハム社主は、権力と戦う新聞のアイコン(偶像)に祭り上げられ、ワシントン・ポストの威信は絶対的なものになった。

 「私たちは神様のような存在だった」と同紙の元記者ヘンリー・アレン・はニューヨーク・タイムズへの寄稿文の中で回想している。

 だが、頂上を極めたワシントン・ポストは、ゆっくりと現実へと下降を始める。長男ドン・グラハムが同紙の発行人になった80年代初頭にはピュリッツア賞を受賞したルポ記事がねつ造であったというスキャンダルが発生し、神話にヒビが入った。

 90年代に入り文字通り社主になった彼は、

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