2013年10月29日
前回は、日本の経済状態は、国民一人当たりの国内総生産(GDP)の水準で見ると、米国・欧州の経済先進圏に比べても、最近の四半世紀では、全く遜色がなく、西欧・北欧型の高福祉・高福祉社会も、米国型の低負担・低福祉社会も、自由に選択する事が可能な事を述べた。同時に、現在の日本は、低負担・中福祉型の制度であることも付け加えた。
ここで出て来る疑問・質問は、日本の財政は借金で首が回らないので、日本国民には、そんな選択の余地はないのでは、というものであろう。
そこで、日本政府、日本銀行などが公表しているデータでは、実際の借金の額(金融負債残高)の数字はどうなっているかを、具体的に見ることが肝要となろう。
日本の政府部門と言っても、中央政府(国)、地方政府(都道府県・市町村などの地方公共団体)、社会保障基金(厚生年金などの積立金など)の3部門がある。
次に重要なのは、政府部門は、(金融)負債だけではなく、(金融)資産も持っていることである。日本国民は、最近15年余りの期間には、政府は莫大な借金(負債)を抱え込んでいることを、散々聞かされて来た。しかし、政府は、どれだけ資産を抱え込んでいるかは、一般国民に分かり易く説明されて来なかったというのが、大多数の日本国民が抱く実感であろう。
第3に肝要なのは、日本の政府部門は膨大な借金を抱え込んでいると喧伝されて来たが、ところで、『誰』が、日本の政府部門に、そんな膨大なカネを貸して呉れているのか?
貸して呉れる人(機関)がいなければ、借金を積み上げたくても出来ないのは当たり前のことである。しかし、この当たり前の設問が、一般国民に提示されることは、ほとんどなかったと言っても過言ではないであろう。
では、日本銀行が毎四半期ごとに集計している『資金循環表』で、日本の政府部門の資産・負債、純負債(=負債―資産)を、2012年度末(2013年3月末)時点で、兆円以下は四捨五入した数字で眺めて見よう。
国(中央政府)は、資産が216兆円、負債が934兆円、純負債が718兆円と、確かに大借金を抱えている。地方公共団体(都道府県・市町村)は、資産が77兆円、負債が177兆円、純負債が100兆円である。しかし、
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