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コメは安楽死するしかない!? 外れてほしかったTPP交渉予想

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 米国が年内の妥結を目指してTPP交渉を加速させようとしている。これまで、各国に困難な部分があるため、TPP交渉の中で先送りされてきた関税交渉についても、日米2国間の話し合いの中で、明確な要求を行い始めている。それは、自民党TPP委員会や衆参両院の農林水産委員会が、関税を維持できなければTPP交渉から脱退も辞さないと決議した、コメ、麦、乳製品、牛肉・豚肉、砂糖・でんぷんという重要5品目を含めた、農産物全てについての関税撤廃である。

 11月17日付の朝日新聞は、「米通商代表部(USTR)のフロマン代表は10月下旬、甘利明TPP担当相との電話協議で、全輸入品の関税撤廃を要求。甘利氏は『重要5項目は政権の命運にかかわる』などと応じて拒否したが、米国側はその後も、一部の品目について20年以上の猶予期間を認める考えを示唆しながら、全輸入品の関税撤廃を求め続けている」と報じている。

 そのような中で、各紙は、政府が、コメの関税を維持する代わりに、関税ゼロの輸入枠を設定することを検討していると報道している。これはTPP交渉の最終的な落としどころの姿として、私がさまざまな場で述べてきたことである。

 高い農産物価格で農家の所得を保証するという農政を前提とする限り、この解決策しか考えられないことを説明しよう。

 原則に対して例外を主張する国は、代償を払わされるのが、通商交渉だ。ガット・ウルグァイ・ラウンド交渉で、輸入数量制限等の非関税障壁を関税化すれば消費量の5%の関税ゼロの輸入枠(ミニマム・アクセス)を設定するだけで済んだのに、我が国はコメについて関税化の特例(例外)措置を要求したために、この輸入枠を消費量の8%まで拡大するという代償を払わなければならなかった。それが過重だと分かったので、

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