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やはりこれは自民党農政への「王制復古」だ―安倍さんは騙されているのか、騙しているのか?―

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 12月20日夜のテレビ番組に安倍総理が出演し、とりわけ農政改革の成果を強調していた。「40年以上続き、自民党では手をつけられないだろうと言われた減反に手をつけた。さらに、農地集積の機構を創設して、農業の規模を拡大し、生産性を上げていく。農政の大転換を決定した。」おおむね、こういう内容だった。

 しかし、既に指摘しているように、今回の政策変更は、民主党が2010年に導入した戸別所得補償を廃止しただけで、水田にコメを作らせないという1970年から続けてきた本来の減反補助金は、大幅に拡充される(「“廃止”では全くない“減反見直し”」参照)。

 具体的には、米粉やエサ用のコメを生産すれば、減反補助金を主食用のコメを販売した場合の収入と同額の10万5千円(10アールあたり)にまで拡充する。減反とは農家に補助金を出して主食用のコメの生産を減少させて、その米価を高く維持することだ。この本質はいささかも変わらない。減反廃止などではない。

 この政策には、4つの大きな問題がある。

 第一に、膨大な財政負担が必要となることだ。今でも減反には、戸別所得補償を含めて5千億円の補助金、財政負担を行っている。農林水産省はエサ米の需要は450万トンあるとしているので、それだけのエサ米生産が行われれば、面積は65万ヘクタール、財政負担は7千億円、残りの転作面積のための補助金を加えると、減反の補助金は8千億円に膨れ上がる。

 第二に、米粉やエサ用にコメを販売すれば、いくらかの販売収入が得られるので、農家は主食用のコメよりも、米粉やエサ用にコメを作った方が有利となる。そうなれば、主食用のコメの供給が減り、主食用の米価は上昇する。実は、これこそ、

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