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『クイーン・オブ・ザ・ナイト』とタイムズスクエアのこれから

茂木崇 ニューヨーク・メディア文化研究者

役者のパフォーマンスを1対1で

 『クイーン・オブ・ザ・ナイト』(http://queenofthenightnyc.com)のプレビュー公演が昨年の大晦日、ニューヨークのパラマウントホテルの地下で幕を開けた。ブロードウェイと8番街の間にあるスタイリッシュなホテルだ。ニューヨークのど真ん中、タイムズスクエアに近い。

Katherine Crockett in Queen of the Night. Photo credit: Matteo Prandoni/BFAn yc.com拡大Katherine Crockett in Queen of the Night. Photo credit: Matteo Prandoni/BFAn yc.com

 観客はホテルに到着すると、まず1階のクロークに荷物を預ける。階段を下りていくと、妖艶な装いの女性が目にとまる。なんとも怪しげな魅力を放っている。

 作品自体は、ごくわずかに感じられる程度だが、モーツァルトの『魔笛』をベースにしているという。オペラ好きならずとも期待が高まる。

 観客は入り口からそのまま中に入れてもらえる場合もあれば、役者に導かれて別の場所で役者のパフォーマンスを1対1で経験してから中に入るという流れも。

 実は、『クイーン・オブ・ザ・ナイト』は「イマーシブ・シアター」という新しいタイプの演劇を取り入れたショーである。「イマーシブ」とは、「没入する」といった意味で、舞台公演ではステージと客席の境界を取り払ってしまうところが特徴だ。観客は座席に座って舞台を鑑賞するのではなく、自らがパフォーマンスに参加しながら没頭していくことになる。

ボールルームのミステリアスな女王

 いよいよホールの中に入ると、巨大なボールルームをディナーテーブルとバーが取り囲んでいる。ボールルームにはミステリアスな女王が立っている。天井は高く、装飾がほどこされている。バーは実験室のような近未来感覚のデザインである。

 入場する時間帯にもよるが、最初の1時間ほどは、観客は女王と女王を取り巻くパフォーマンスをアルコールを満たしたグラスを手に楽しむ。番号を呼ばれた人は、女王に近づき謁見する機会をえる。

The cast of Queen of the Night. Photo credit: Joan Marcus拡大The cast of Queen of the Night. Photo credit: Joan Marcus

 ついで、テーブルに着席すると、今度は主としてアクロバットのショーになる。テーブルによっては見知らぬ観客と卓を囲み、親しくなるように促されることもある。

 ショーが佳境に達すると、パフォーマーたちが自ら客の間を回って肉とロブスターのディナーをふるまう。食事がすむと、最後はダンスの時間だ。テーブルで同席した人と踊るもよし、パフォーマーと踊るもよしである。

 この公演の舞台となっているホテルの地下では、1938年から1951年まで、ダイアモンド・ホースシューという名のもとに、ヴォードビル・スタイルのレヴュー・ショーが上演されていた。

 今回、パラマウントホテルは2000万ドルの費用をかけ、実に62年ぶりにダイヤモンド・ホースシューを復活させた。『クイーン・オブ・ザ・ナイト』は新生ホースシューで上演される第1作である。それがイマーシブ・シアターとサパー・クラブをミックスした ・・・続きを読む
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筆者

茂木崇

茂木崇(もぎ・たかし) ニューヨーク・メディア文化研究者

東京工芸大学専任講師。1970年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専門はマス・コミュニケーション論、アーツ・マネジメント論で、守備範囲はニューヨークの新聞、雑誌、出版、テレビ、デジタルメディア、広告、音楽、ブロードウェイ。共著に『コミュニケーションの政治学』(慶應義塾大学出版会)など。

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