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金融政策は自国本位にすれば良い

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 景気回復とともに、アメリカのFRBは、これまでの大規模な金融緩和を弱めようとしている。ところが、それによって、新興経済国の通貨が下落し、世界経済を危機に陥らせているという議論がある。しかし、アメリカが大胆な金融緩和をしていた時には、世界に通貨をばら撒き、バブルとインフレの種を撒いていると言われた。

 アメリカはどうすれば良いのだろうか。金融緩和をしても咎められ、引き締めても咎められる。アメリカの金融政策を非難している人々は、どうしろと言うのだろうか。

 首尾一貫した主張をする人の意見は、それが正しくても正しくなくても、聞いてみる価値があると私は思っているが、支離滅裂な議論しかできない人の意見を聞くのは、たいていの場合、時間の無駄である。

 先ほどの問いに、最初に答えておくと、アメリカは好き勝手に金融政策をすれば良いである。なぜか。

アメリカはペソやレアルやルピーをばら撒くことはできない

 まず、大胆に金融緩和をしていた時だが、アメリカは世界に通貨をばら撒くことはできない。アメリカがばら撒けるのはアメリカのお金、ドルだけであって、ペソやレアルやルピーやリラやランドやディナールや元やウォンやユーロやポンドや円をばら撒くことはできない。

 もちろん、ドルをばら撒くと、現実に、ペソやレアルやルピーやリラやランドや元やウォンもばら撒かれることが多い。しかし、それは、これらの国が、為替レートがドルに対してあまり動かないようにしているからだ。為替レートとは通貨と通貨の交換比率である。ドルが増えた時に、自国通貨を増やさなければ、相対的に少なくなった通貨は上昇する。これを嫌って新興国の中央銀行が通貨を増やしたから、ペソやレアルやルピーやリラや元やウォンもばら撒かれたのである。

 日本は為替レートを固定化しようとしていないので、円を増やさなかった。だから円高になったのである。超円高の結果、日本が先進国の中で一番景気回復が遅くなったので、アベノミクスが登場して、

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