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ソニー・ブランドの瀬戸際、遅すぎたTV、パソコンの切り離し

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 ブレーク・イーブン(損益分岐点)、セル・スルー(販売)、ライト・サイジング(適正規模化)、ロード・マップ(工程表)。経営学、財務分析論のカタカナ語が飛び交う。ビジネススクールではなく、リストラや通期の最終赤字見通しを公表したソニーの2013年第3四半期の業績発表である。経営再建方針は選択と集中をキーワードにしている。

ソニーの決算説明会で、パソコン事業の売却などについて発表する平井一夫社長=2014年2月6日午後、東京都港区港南1丁目、河合博司撮影 ソニーの決算説明会で、パソコン事業の売却などについて発表する平井一夫社長=2014年2月6日午後、東京都港区港南1丁目、河合博司撮影

 具体的には、VAIOブランドのパソコン事業の売却、テレビ事業の子会社化、そして全世界で5000人規模の追加人員削減の発表だった。しかもリストラに伴う構造改善費用は2014年度も見込まれ、利益を圧迫する要因になる。つまり人員削減の実施は2014年度にずれ込む可能性を示唆した。ソニーは2008年度から2011年度まで当期利益ベースで赤字を計上し、2013年度、再び赤字に転じる。特にテレビ事業は今年度も含めて10期連続の営業赤字の見通しである。変革を連呼しながら、変革速度の遅さが目立った。

 平井一夫氏は2012年4月の社長就任以来、経営方針説明会やNHKスペシャルなどで、現場の訪問、従業員との意見交換を重視してきたとアピールしていた。2013年5月の経営方針説明会では、変革に対する思いを伝えるため、時間の4分の1を割いて、16カ国、45カ所の製造拠点、販売会社、研究所、子会社などを訪問したと具体的に語り、現場の従業員の重要性に触れていた。しかし6日の説明会では、現場を中心とする人員削減が中心で、役員報酬カット、役員交代など経営責任には踏み込まなかった。

 主としてアナリスト向けソニーの決算説明会では、英語で質問された場合は、日本語に通訳された後、日本語で回答される仕組みになっている。外国人への対応ができている。ただし、すでに業績が悪化し、一部格付け会社から投機水準まで格下げされた企業に英語で質問をぶつける場面はなかった。ソニーは、外国人アナリストがわざわざ足を運ぶような市場が注目する成長企業ではない。むしろ企業再生ファンドに協力を仰ぐ企業である。

過去の成功体験を捨てる難しさ

 パソコンやテレビの切り離しに遅れたことは、過去の成功体験を捨てるのはいかに難しいかを物語る。パソコン事業の売却などの改革案について、ドイツ証券の中根康夫アナリストは「去年の今頃、出てこなければいけなかった内容」とコメントし、今後、いかに正しい経営判断を導けるか、平井氏に質問した。「お客様に評価をいただける商品をつくりあげて、競争が激化する中でビジネスをしていくことに、やはり厳しい目をしていかなければならない」という回答にとどまった。

 ソニー全体の業績は、ソニー生命など金融部門、映画や音楽のソフトウェアが支える形になっている。創業の原点であるエレクトロニクスが足を引っ張っている。エレクトロニクス部門では、

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