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[32]やはり一般庶民に最も重い量的金融緩和政策と消費税率引き上げの負担

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 「アベノミクス」の下での「量的・質的金融緩和」、「異次元緩和」などと銘打つ日本銀行の大規模な量的緩和政策が、昨年4月に開始され、その1年後の今年4月からは、消費税率が5%から8%に引き上げられた。この両者の経済政策の変更を反映する今年4月分、5月分の月次経済統計が出始めた。

 量的金融緩和政策のキャッチ・フレーズは、「デフレ解消」であった。デフレ、すなわち物価水準の下落は、「諸悪の根源」というわけであった。

 ここは、量的金融緩和政策と、消費税の税率引き上げで、大多数の一般庶民には何が起きたかを、日本政府自身が集計しているデータに則して先入観なく眺めるのが肝要なところだ。

 まず、日本全国ベースの総合消費者物価指数の前年同月比変化率で、インフレ・デフレの状況を見ると、第2次安倍政権が成立した2012年12月はマイナス0・1%と、数字の上では、明らかに下落傾向を示していた。その後も、2013年3月にはマイナス0・9%と、同年5月まではマイナス圏での滞留が続く。

 それ以後は漸増が続き、今年4月には、3・4%にまで上昇したのだから、インフレ率を引き上げるという政策目標は、表向きは達成されたと言えよう。

 しかし、2005年以降の総合消費者物価指数の水準の推移を眺めると、2009年半ば以降は緩慢な下落は認められたが、急激であったというほどではなかった。総じて、日本の総合消費者物価指数の水準は、超安定状態を維持していたというのが正確なところだった。

 2005年を基準とすると、米国とユーロ圏の総合消費者物価指数の水準が、2005年以降だけでも、20%前後も上昇したのとは、際立った違いであった。日本の場合には、昨年2月以降の持続的な上昇で、リーマンショック前の水準を、ようやく回復したに過ぎない。

 アベノミクスの唱道者の周辺からは、インフレ率の引き上げ、デフレ脱却などの政策目標が達成されたとの自画自賛が、経済マスコミを通じて大きく拡声されて伝わる。しかし、大多数の日本国民、勤労者にとっては、生活が苦しくなったというのが本音であろう。そのことは、日本政府自身が集計・推計している月次経済統計が雄弁に物語っている。

 まず、インフレ率上昇・デフレ脱却といっても、その中身のほとんどは、食料品価格と、ガソリン代、電気代などの光熱費などのエネルギー価格の上昇と、3%の消費税率の引き上げに起因するものである。

 今年4月の全国ベースの物価水準の前年同月比上昇で見ると、

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