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高速道路「横浜環状南線」の理不尽、国と民営会社が一体で強制収用の動き

まさのあつこ

 国土交通省関東地方整備局と東日本高速道路会社(NEXCO東日本)は、東京オリンピック開催年である2020年の開通を目標として、「高速横浜環状南線」(横浜市金沢区釜利谷町~戸塚区汲沢町)建設に向けた動きを加速させている。任意買収が進まない用地取得のために、今年3月、強制収用を前提とした手続を開始している。

 一方、6月24日、同区間に在住する地権者ら10名は、「騒音や大気汚染問題で住民との話し合いの最中でありながら、用地取得率が半数にも満たない中で、『最後の手段』と言われる強制収用を進めることは許されない。」(申請者代表の比留間哲生さん)として、神奈川県知事に対し、地権者として紛争解決を求める「あっせん申請書」を提出した。

 高速道路の民営化から10年が経過するが、一体、何が起きているのか。

出典:国土交通省関東地方整備局横浜国道事務所ウェブサイト
http://www.yokokan-minami.com/site/main.php?category=1&sub=1拡大出典:国土交通省関東地方整備局横浜国道事務所ウェブサイト http://www.yokokan-minami.com/site/main.php?category=1&sub=1

 関東地方整備局とNEXCO東日本が進める「高速横浜環状南線」(約8.9km)は、延長約300キロメートルの「首都圏中央連絡自動車道(圏央道)」の始点区間にあたり、「東京外かく環状道路(外環)」、「首都高速道路中央環状線(中央環状)」と共に「3環状」と称される高速道路の一番外側に位置している。接続区間である「横浜湘南道路」(横浜市戸塚区汲沢町~藤沢市城南一丁目)とともに「横浜環状道路」と称され、強制収用に必要な公益性を確認する手続である「事業認定申請」に向けた説明会を3月に開催したばかりである。

 この手続を進める時期を問題として「あっせん申請」を行ったのが今回の地権者らだ。

44%の用地取得率で強制収用は通達違反

 「あっせん申請」とは、公共事業用地の取得に際し事業者と地権者との合意が成立しない場合、双方どちらからでも紛争解決を求めて知事にあっせん委員会を設けるよう求めることができる土地収用法に基づいた手続だ。知事があっせんに適すると判断すれば、5名からなるあっせん委員を任命し、あっせん委員会が紛争解決を両者に促すこととなる。

 今回、同地権者らが神奈川県政記者クラブで会見し、事業認定申請の手続に国が応じないよう、黒岩祐治知事にあっせんを求めた理由などを説明した。その主要な点は次のようなものだ。

 第一に、現時点での強制収用手続開始は、国土交通省が各地方整備局長等宛で出した通達違反である。2003年3月28日付けの通達は「事業認定を申請する場合は、用地取得率が80パーセントとなった時、または、用地幅の杭打ちをしてから3年を経た時のいずれか早い時期を経過した時」とするよう求めている。

 「80パーセント」とは土地所有者の人数であると明記されているが、高速横浜環状南線については、国自らが公開した資料で、用地買収は数の上では44%の地権者しか応じていないからだ。さらには「関係者が2000人以上にのぼる大規模事業であることから、関係者の協力を得ながら、当面、任意協議を鋭意進める」(http://www.ktr.mlit.go.jp/youchi/shihon/youchi_shihon00000006.html)としていたことにも反している。

 記者会見を行った大橋宏さん(写真左端)は「うちには用地買収の交渉にすら来ていない。突然、説明会の開催案内が来た」とその不当性を訴えた。

「あっせん申請」提出について会見をする地権者ら=2014年6月24日、神奈川県政記者クラブ拡大「あっせん申請」提出について会見をする地権者ら=2014年6月24日、神奈川県政記者クラブ

 第二に、1987年の計画発表以来、なんども再評価が行われ、事業評価監視委員会では「住民との合意が不可欠である」との付帯意見も付けられているとした。申請者代表の比留間さん(写真右から2番目)は、「地権者1000件もの土地を収用するなど前例がない。横浜市議会でも、強制収用をかけるのは、残り1、2件となった場合だけだと横浜市が答えている」とその異常さを訴える。

 確かに今年3月17日の横浜市建築・都市整備・道路委員会で、市内の道路事業で土地収用法が適用された前例を尋ねられ、松下建設部長が「環状2号線については1件です。桂町戸塚遠藤線についても1件です」と答えている。

 横浜市道路局の高速道路課によれば、 ・・・続きを読む
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筆者

まさのあつこ

まさのあつこ(まさの・あつこ) まさのあつこ(ジャーナリスト)

ジャーナリスト。川で泳ぐことが好き。1998年より衆議院議員の政策担当秘書等を経て、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。主な著書に、「四大公害病」(中公新書 2013年)、「水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館 2012年)、「日本で不妊治療を受けるということ」(岩波書店 2004年)。共著等に「ダムを造らない社会へ」(新泉社 2013年)、「八ツ場ダムは止まるか」(岩波書店 2005年)など。

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