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なぜ和菓子屋にはCSR企業が多いのか

森摂 ビジネス情報誌「オルタナ」編集長

 創業550年余の歴史をもつ和菓子の駿河屋(和歌山市)が6月25日付で、和歌山地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約9億円とされる。

 駿河屋は室町時代中期の1461年に創業し、「練り羊羹(ようかん)」を初めて世に出した老舗として知られている。全国各地には「駿河屋」からの分家、暖簾分けによるものは11社あるそうだ。

 室町時代から続く老舗が幕を下ろしたのは寂しい限りだが、同社の場合は、当時の社長らが2004年、架空の第三者割当増資を行ったとして逮捕・起訴されたのをきっかけに信用が悪化したという背景があった。

 駿河屋の破産で改めて思い至るのは、和菓子業界にはCSRに積極的な企業や店が実に多いということだ。

 駿河屋と同じく室町時代に京都で創業した「虎屋」(とらや)は、WWFJapan(世界自然保護基金日本委員会)を通じて、野生のトラの保護活動を支援している。餡(あん)の原材料である北海道の小豆の生産環境を守るために、地球温暖化防止のための活動も続ける。

 「たこ焼きにしか見えないシュークリーム」「お好み焼きそっくりなマロンケーキ」などユニークなお菓子で知られる「虎屋本舗」(福山市、1620年創業)の高田信吾社長は、ホームページで熱くCSRを語る。

 ――「商人の売買するは、天の相なり」=「企業は社会のお役に立たなければならない」という考えを基本とし、商訓「和魂商才」の教えと商人道に従い、社員ひとりひとりが、より高い倫理観と強い責任感で、確かな品質と、独創性の高いお菓子創りと、最高のサービスを通じて社会的責任を果たして参ります――。

 同社は2008年に定年を60歳から70歳に引き上げ、その後も希望すれば単年度契約で働けるようにした。その結果、パートを含む全従業員70人の4割が60歳以上という「超シルバー企業」になったという。

 このほか、地域の清掃・リサイクル活動、福山市中心市街地活性化のための活動、福山城ライトアップへの協力など、地域に根ざした社会貢献活動を展開している。

 明治期に創業した「たねや」(滋賀県近江八幡市)は、

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