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絶滅危惧ウナギ、消費者視点だけが市民社会ではない

団藤保晴(ネット・ジャーナリスト)

  国際自然保護連合がニホンウナギを絶滅危惧種に指定したニュースに見るマスメディアの鈍感ぶりを嘆く。赤道の北に産卵場があり日本列島に稚魚が回遊してくる種だけではなく、世界中のウナギを絶滅に追いやりつつある日本。古来の食文化には間違いないものの、これほど消費量が増える前、ほんの30年前までは食べ方が違っていた。いま量販している丼チェーン店や弁当店ではなく、専門店で「今日は鰻だ」と意気込んで食べた。今の消費形態がむしろ異様なのに、なぜ疑問を持たない。

 1980年代半ば以降に世界のウナギに何が起きたのか、2枚のグラフをセットにして見ていただけば一目瞭然である(右下のグラフ)。ナショナルジオグラフィックの集中連載「ウナギが食べられなくなる日」からそれぞれ引用、並置して掲げる。上はウナギの世界生産量の推移で、80年代半ばから急速に立ち上がり、そのほとんどがウナギ養殖による増加だと示している。世界消費量の7、8割は日本人のお腹に入るとされている。

 養殖池に入れられるウナギの稚魚シラスウナギの資源量がどう変動したのかグラフで生産量推移と対照しよう。資源量のグラフは温帯ウナギ3種について1960-70年代を100とした推移であり、絶対量推移ではない。ニホンウナギは1980年には既に資源が減っているが、ヨーロッパウナギやアメリカウナギは豊かだった。それが1990年に向かって奈落の底に沈んでいく。ヨーロッパウナギは中国が安く輸入して養殖、日本のウナギ消費が価格が下がって大衆化していく過程でどっと日本市場に流れ込んだ。

 ヨーロッパウナギはニホンウナギより一足早く絶滅危惧種に指定されて国際取引規制が掛かった。アメリカウナギ稚魚は実質的に禁漁状態と伝えられる。これでは養殖のための稚魚が足りないから、業者はアフリカやアジア熱帯のウナギにまで手を伸ばしている。

 世界自然保護基金WWFジャパンが6月半ばに発表した資料「ニホンウナギを含めたウナギの資源管理が急務に」はウナギの密漁や密輸に警鐘を鳴らしている。

 《2013年度(2012年12月~2013年3月)の日本でのニホンウナギの稚魚採捕量は、各県による報告量を合計した量と池入れ量(国内の養殖場に入れられた量)に大幅なかい離があった。また、

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