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 もとになったのは同社の「共働き家族研究所」が7月にまとめた「いまどき30代夫の家事参加の実態と意識」と題する調査報告書だ。

 ここでは「夫も家事参加をするのがいまどき」として夫の家事参加は当たり前という姿勢が貫かれている。80ページを超えるこの報告書で「妻のダメ出し」の部分はわずか1ページだ。

無意識に「夫の鬱憤の代弁」?!

 宣伝担当部門は、こうした夫の参加意欲を妨げている要因の解消こそが夫の家事参加を促すとして、これを前面に押し出す方針を取った。広告代理店との相談の中で、インパクトのあるキャッチフレーズとして「家事ハラ」の言葉が浮かんだ。新書の「家事ハラ」の存在はその後で知ったが、男性の家事参加を促すとの目的では一致しているので問題はないと判断したという。

 だが、「ハラスメント」という深刻な人権侵害を意味する言葉が貼られたことで、夫の家事参加への助言は、とがめられるべき夫への人権侵害に変えられてしまった。推測ではあるが、「夫の家事を促すにはその気持ちに寄り添うことが必要と考えた」(同社の説明)という思いが、男性が多数を占める打ち合わせの場で、無意識に「妻の叱責に対する夫の鬱憤の代弁」にすり変わってしまったのではないか。それが、女性の(そして男性の)生きづらさを直視させるための言葉を封じ込めたことに、どれだけの関係者が気づいていただろうか。

 2014年版「男女共同参画白書」では、共働き男性の家事時間は女性の4割。その比率は10年前と変わっていない。アベノミクスで女性の活用がはやされる一方で「残業代ゼロ制度」という労働時間の規制緩和案が持ち出され、女性の二重負担は高まるばかりだ。加えて夫の家事への苦情までとがめられるとなれば、女性たちの怒りが爆発したのも当然かもしれない。

言葉を奪っていく装置

 こうした「家事ハラ」定義のすり替えに私が敏感に反応してしまったのは、これまで似た状況が繰り返されるのを見てきたからだ。

 1980年代に日本に登場した「セクシュアルハラスメント」は、 ・・・続きを読む
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筆者

竹信三恵子

竹信三恵子(たけのぶ・みえこ) 和光大学現代人間学部現代社会学科教授

和光大学現代人間学部教授。東京生まれ。1976年、朝日新聞社に入社。水戸支局、東京本社経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年から現職。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)、「女性を活用する国、しない国」(岩波ブックレット)、「ミボージン日記」(岩波書店)、「ルポ賃金差別」(ちくま新書)、「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書)、「家事労働ハラスメント~生きづらさの根にあるもの」(岩波新書)など。共著として「『全身○活時代~就活・婚活・保活の社会論』など。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。

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