2014年09月01日
「薄皮まんじゅう方式」という道路の作り方を聞いたことがあるだろうか。大半を占める「あんこ」が税金、「薄い皮」程度の建設費を旧道路公団が出して作った道路の通称だった。この方式を民営化されたはずの高速道路会社が踏襲していたことが、国土交通省(国交省)関東地方整備局と東日本高速道路会社(NEXCO東日本)が一体で進める「高速横浜環状南線」(横浜市金沢区釜利谷町~戸塚区汲沢町)の根拠法を掘り下げて取材する過程で明らかになった。
ことは複雑であるため、順を追って解説する(「高速横浜環状南線」の最新情報については写真とキャプションで示す)。
国交省が関与する道路には「高速自動車国道」、「一般国道」、「都道府県道」、「市町村道」4種類がある。道路法で定められている。高速道路民営化前は、「高速道路」とはここで言う「高速自動車国道」のことを指し、その作り手は、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団の道路4公団に限られていた。
しかし、「高速自動車国道」の建設費を料金収入で償還(返済)する仕組みは、交通需要予測が過大で、採算がとれなくなり破綻。解決策(または破綻隠し)として導入されたのが、採算路線の料金収入を不採算路線に充てるプール制だった。しかし、これは借金がもっと増えるという失敗に終わった。
そこで小泉純一郎首相(当時)が言い出したのが民営化だ。「採算性を重視した事業経営が行われる等のメリットが生じると考えられることから(略)、新たな組織は民営化を前提とし、国費を投入しない」(2002年4月26日参議院本会義議事録)と基本方針を示し、「道路関係四公団民営化推進委員会」を設置。しかし、これも失敗に終わる。
民営化会社が作る採算路線とは別に、不採算でも国が血税を投入する「新直轄方式」で高速道路を作り続ける方式が「政府与党申し合わせ」(2002年12月12日)で導入されたからだ。しかし、これは失敗の始まりでしかなかった。
2003年12月25日に開催された第1回の国土開発幹線自動車道建設会議(以後、国幹会議)までは、佐藤信秋道路局長(当時)が次のように述べていた。
「将来、民営化会社ができましたら会社による整備というものと、そして新直轄方式による整備ということで、無料道路として新直轄方式で整備する」
民営化会社による高速道路の根拠法は「道路整備特別措置法第3条」、新直轄高速道路の根拠法は「高速自動車国道法第6条」であると資料に示され、高速道路の建設方法はこのどちらかでしかない。
しかし、このとき、国幹会議を構成する政治家と学識経験者は、重要なことを見逃した。民営化政策は、本来、国土開発幹線自動車道建設法3条と5条に基づいて法定された予定路線(11,520km)と基本計画(10,607km)、および高速自動車国道法5条に基づいて法定された9342kmを改訂し、削減しなければ完結しない。ところが、これをしなかった。そのため、やがて、これらの計画は巧妙に復活を遂げていく。
2006年2月7日の第2回国幹会議では、「会社整備区間」と「新直轄区間」の両方でコストを削減し、本来なら借金の早期返済に充てるべきところを、
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください