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GPIF年金積立金運用方針見直しの不可解―ROEで投資先を選ぶという不思議―(下)

吉松崇 経済金融アナリスト

ROE(自己資本利益率)では企業の優劣は判定できない

 ROE(自己資本利益率)で企業の収益力を見るのは大いなる間違いである。

 以下、このことを数値例で示したい。

 いま仮に、総資産100億円で、「金利支払い前税引き前利益」(*)が10億円の企業があるとしよう。総資産の100億円は、株式(自己資本)または借入(負債)で調達される。法人税実効税率は30%とする。

(*)「金利支払い前税引き前利益」とは、売上から原材料費・人件費・物件費・機械設備の償却費等の(金利の支払いを除く)全ての経費を控除したもので、企業の基礎収益力を表す指標である。通常、EBIT(”Earnings Before Interest and Tax“の略語である)と呼ばれる。

 (1)この会社が無借金企業である場合、この会社のROEは7%である。
(この会社は総資産100億円を全て株式で調達している。従って自己資本は100億円。金利の支払いはなく、税引き利益は30%の法人税を払った後だから10億円x70%で7億円。ROEは7/100, すなわち7%。)

 (2) この会社が50億円を借り入れで調達して7%の金利を支払うとすると、ROEは9.1%になる。
(この会社は3.5億円の金利を払っているので、税引き前利益は6.5億円、税引き利益は4.55億円。自己資本は総資産から借り入れを引いた50億円。従って、ROEは4.55/50, すなわち9.1%。)

 (3) この会社が80億円を借り入れで調達して8%の金利を支払うとすると、ROEは12.6%になる。
((2)と同じ計算で、支払い金利が6.4億円、税引き前利益は3.6億円、税引き利益は2.52億円。自己資本は20億円。ROEは2.52/20, すなわち12.6%)

 上記の(1)、(2)、(3)は資本構成が異なるだけで、この企業のビジネスのファンダメンタルズ、すなわち、売上から経費を除いた基礎収益力、EBITは10億円で変わりがない。にもかかわらず、企業が借金の比率を増やせばROEは高くなる。

 ところで、 ・・・続きを読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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