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[49]経済は成長しても、労働者は置き去り・・・経済格差の放置は自由への脅威に

齋藤進 三極経済研究所代表取締役

 「有國有家者。不患寡而患不均。不患貧而患不安」――。国を有ち(たもち)家を有つ者は寡なき(すくなき)を患えず(うれえず)して均し(ひとし)からざるを患う、とは、論語の季氏篇の有名な一節である。

 最近の30余年の間に、米国、英国、その米英に追随して来た日本などの先進経済諸国では、経済的な自由に関することは、あたかも至上の正義のように頻繁に語られて来た。しかし、経済的な平等に関して正面から語られることは、あまりにも少なかったのではないか。

 その結果が今日、私たちの目の前に広がっている。経済的不平等が様々な形で顕著になり、自由で民主的な社会の健全な基礎が、蚕食される色合いが濃くなっている。

 その一端を表すデータがある。国税庁が26日に公表した「民間給与実態統計調査」の平成25年(2013年)分だ。毎年好評される意義ある統計資料である。

 それによると、1年を通じて勤務した給与所得者のうち、正規労働者数は3055万6千人、非正規労働者数は1039万7千人、両者を合計すると4095万3千人、これに役員等を加えると総数で4645万4千人になるという。

 今次の発表分には、平成24年には873万8千人に上った「1年未満勤続者」は含まれていない。その大部分は、非正規労働者と見られる。この分を含む統計は、今年11月下旬の公表という。

 上記の未算入の非正規労働者などの分に留意して、今次公表分の正規労働者の平均給与の推移を見ると、平成24年の467万6千円から平成25年の473万0千円へと、5万4千円、1・2%の増加を見たという。しかし、非正規労働者の平均給与は、168万0千円から167万8千円へと、2千円、0・1%の減少であったという。

 しかも、平成25年の平均給与では、男性の非正規労働者は224万5千円と、男性の正規労働者の526万6千円の42・6%、女性の非正規労働者は143万3千円で、女性の正規労働者の356万1千円の40・2%に過ぎない。

 男女の非正規労働者と正規労働者の給与水準の格差の実態は、上記の「1年未満勤続者」を含めれば、更に拡大するだろう。

 非正規労働者の全労働者に占める比率の増大と、労働者間の給与格差の拡大の背景には、労働者の賃金水準の長期低迷がある。

 日本の場合には、実際の金額ベースの名目賃金指数も、インフレ率を割り引いた実質賃金指数も、1997年前後までは上昇傾向を示していた。その後は、長期下落傾向を続け、最近の水準は1990年代初めの水準にまで反落しているのが実状である。

 要するに、日本の名目賃金、実質賃金の水準は共に、1990年代初めまでの上昇傾向から転じて、最近の四半世紀近くは、長期低迷傾向を示しているのだ。また、米国の実質賃金は、1980年代初頭から最近までの30年間以上にわたり、日本の場合以上の長期低迷を続けて来た。

 米国の場合には、その期間にもインフレ率がプラスに保たれて来たので、名目賃金は上昇を続けて来た。しかし、インフレ分を割り引いた実質賃金は、傾向的な上昇を示して来なかった。

 では、日米ともに実質賃金の水準が長期低迷したために、日米経済の1人当たり平均の実質GDPの水準も低迷して来たかと言うと、事実は全く逆である。

 日本の場合には、

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