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消費増税で新車販売に黄信号、激しかった反動減

中西孝樹 ナカニシ自動車産業リサーチ代表

 9月の国内新車販売台数は前年同月比0.8%減少し、消費税導入後の需要回復の足取りの鈍さを感じさせる内容でした。表面的には、駆け込みと反動減の両方を含む1~9月暦年累計で同6%増、反動減のみを受ける4~9月の年度累計で3%減と、懸念したほどの減少は回避しているかに映ります。しかし、実際の現場は火の車。実需動向は全く芳しくないのです。

再び増税の圧力を受ける自動車需要

消費増税後の自動車販売店=愛知県内拡大消費増税後の自動車販売店=愛知県内

 国内販売は既に黄信号が点灯し、今にも赤信号に変りかねない情勢です。そんな中で、来年10月の消費税導入に応じた車体課税改正論議も政府で始まりました。デフレ脱却ままならぬ国内景気減速の暗雲が漂う中で、再び増税の圧力を受ける自動車需要の今後の課題を検証してみます。

 統計上の販売台数とは、ユーザーが新車登録(軽自動車の場合は届け出)した台数です。従って、実需とは完全に一致しません。消費税率引上げ後の4~9月の上半期国内販売台数は3%減ですが、ディーラーの受注台数は前年から15%程度減少したと推定されます。

 消費税率引上げ後の4月に20%近くに落ち込み、いったん6月頃に浮上したかに見えたのですが、再び勢いは失速しています。新車需要の反動減は明らかに予想よりも厳しかったのです。

 消費税率引き上げ前の駆け込み需要が早期に顕在化した昨年の2013年10月からピークとなった2014年1月まで受注台数は前年比40~60%と異常な盛り上がりとなっています。今年度の下半期との差は非常に大きいのです。環境性能課税導入を検討する総務省の意見聞き取りに対し、自動車工業会は最近の需要動向に対し「回復時期が見えない」と、先行きを非常に不安視しています。

横行するディーラーによる新古車販売

 厳しい受注環境にも関わらず、年度上半期の国内販売台数が微減少に留まった理由は2つあります。第1に、3月末の大量の受注残が販売転換したこと(しかし、これは6月でほぼ消化済み)。第2に、軽自動車を中心に「自社登録」と呼ばれる、ディーラー自ら登録し新古車として販売される行為が横行してきたことです。

 ダイハツ工業とスズキは軽トップの座を奪い合う様相を呈し始めています。軽自動車の暦年累計販売台数を見れば、ダイハツ工業が52万7,703、スズキが52万3,632台と、その差は月を追うごとに接近。軽の王者と呼ばれたスズキは過去34年間首位を快走したのですが、2006年度に首位を陥落した後は、ダイハツの後塵を拝してきました。「ハスラー」のヒットに沸く当社は7年ぶりの「軽No.1」の冠が目前に迫っており、否応にも販売店には力が入ってきているようです。

 表面的数値とは裏腹に、軽自動車の競争環境は厳しさが増大し警戒水域に達しています。過熱した市場シェア争いに参戦しないメーカーの販売は2桁減少が続くなか、トップを争う2社が爆走するのはいかにも不可解な現象であり、実情としては、2桁減が続く受注台数を前に両社の販売店は頭を抱えていると想像に難くありません。

 2000年代半ばにも同様なシェア争いがありましたが、無秩序な戦いの終末は、荒れ果て疲弊した国内事業基盤が残るのみです。無益なトップシェア争いは業界の健全性を害しかねない情勢ですが、 ・・・続きを読む
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筆者

中西孝樹

中西孝樹(なかにし・たかき) ナカニシ自動車産業リサーチ代表

(株)ナカニシ自動車産業リサーチ代表。1994年以来一貫して自動車業界の調査を担当し、日経金融新聞・日経ヴェリタス人気アナリストランキング自動車・自動車部品部門、米国Institutional Investor(II)自動車部門ともに2003年~2009年まで6年連続第1位。2011年にセルサイド復帰後、日経ヴェリタス人気アナリストランキング、IIともに自動車部門で2013年に第1位。1986年オレゴン大学ビジネス学部卒。山一證券、メリルリンチ証券等を経由し、2006年からJPモルガン証券東京支店株式調査部長、2009年からアライアンス・バーンスタインのグロース株式調査部長に就任。2011年にアジアパシフィックの自動車調査統括責任者として、メリルリンチ日本証券に復帰。2013年に独立しナカニシ自動車産業リサーチを設立。

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