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 「我々も責任をしっかり負う。金融機関も支えてほしい」。約3年半前の2011年3月25日、経済産業省の松永和夫事務次官(当時)は、全国銀行協会会長の三井住友銀行頭取(当時)に語った――。

 同年5月29日付の日本経済新聞の記事はそう伝えた。福島第一原発事故を起こした東京電力は、経営破綻(はたん)の瀬戸際にあった。

 大手行が緊急融資約2兆円を行うのかどうか、両者の面談の行方が、東電の生死のカギを握っていた。

 大手行は、国が本当に東電を支えるのか、気が気でなかった。

 事務次官の言葉は、東電を突き放すことはない、と銀行に保証するものだった。この面談を受けて、大手行は巨額融資を実行した、とほかのメディアも伝えている。

 経産省事務方トップが巨大電力会社を救った、極めて重たい言葉だった。

 その面談の記録はないのか。筆者は純粋な思いで、今年6月、経済産業省に対して、そのときの「面談に関する、双方の発言記録など一切の資料を」と、情報公開請求をした。

 これに対して経産省は7月、そうした文書は「不存在」だ、として不開示決定をした。
あれだけ大事な次官の言葉だ、記録を残さないとはどういうことか。あるはずだ。筆者は、すぐさま行政不服審査法に基づいて、異議申し立てを行った。

 約3カ月が経った。政府の「情報公開・個人情報保護審査会」から10月15日付で、筆者に通知が来た。経産省としては、不開示決定を覆す特段の事情はない、として、同審査会に諮問したというものだった。

 経産省が10月3日付で審査会に出した、その「理由説明書」も送られてきた。表現は堅いが、内容は興味深いものだった。少々、長くなるが、その概要を記したい。

 両者の面談内容の記録が「不存在」のわけについて、経産省の「理由説明書」はこういう。

 「(経産省は省の行政文書管理規則で)意志決定に係る過程並びに経産省の事務及び事業の実績を合理的に跡づけ、または検証することができるように文書を作成することを義務づけているが、意志決定過程にも至らない面談時における意見交換についてまでその作成が求められているものではない」

 そうか、次官がとても重要な言葉を発したはずの、あの面談は、「合理的に跡づけ・検証する」ほどのものではなく、記録を残すまでもない、単なる「意見交換」というのだ。筆者にしてみると、あのとき以上に重要な面談は、戦後の日本経済の歴史でそんなにない ・・・続きを読む
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筆者

小森敦司

小森敦司(こもり・あつし) 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

東京都出身。1987年入社。千葉、静岡両支局を経て、名古屋や東京の経済部に勤務、金融や経済産業省を担当。ロンドン特派員も経験し、社内シンクタンク「アジアネットワーク」では地域のエネルギー協力策を研究。現在、エネルギー・環境分野を担当、とくに原発関連の執筆に力を入れている。著書に「資源争奪戦を超えて」「日本はなぜ脱原発できないのか」、共著に「失われた〈20年〉」、「エコ・ウオーズ~低炭素社会への挑戦」。

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