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米FRBによる量的緩和の終了と日銀の追加緩和が意味するもの

吉松崇 経済金融アナリスト

 米FRB(連邦準備理事会)は10月29日、2日間にわたるFOMC(FRBの金融政策決定機関である連邦公開市場操作委員会)の結論として、2008年金融危機以来続けて来た量的緩和の終了を宣言した。

 量的緩和、つまり大量の国債・モーゲージ債の購入によって中央銀行のマネタリーベースを拡大する政策のこの時点における終了は、既に前回のFOMC(9月16~17日)で予告されていたものであり、それ自体に驚きはない。また、この債券購入プログラムが終了するといっても、期限の到来した債券はFRBのバランスシートの中でロールオーバーされるので、マネタリーベースが縮小するわけではない。

 つまり、これは金融の引き締めではなく、金融緩和は継続される。いわば、金融緩和の速度の緩和である。そうであるにもかかわらず、この10月29日のFOMC声明は、この日がFRBの金融政策のエポック・メーキングな転換点であることを示している。

労働市場の見方の変化

 今回のFOMCの声明と前回のFOMC声明(9月17日)を読み比べれば、この間に、FRBの労働市場に対する見方が大きく変化したことが判る。

 前回の声明には、「労働市場の様々な指標は、労働資源が十分に活用されていないこと(”there remains significant underutilization of labor resources”)を示唆している」という文言があったのだが、今回はこれが削られて、「労働市場の様々な指標は、労働資源の不十分な活用状況が改善しつつある(”underutilization of labor resources is gradually diminishing”)ことを示唆している」と書き換えられた。

 米国の雇用統計を見ると、事態は確かに改善しているように見える。

 10月8日に米労働省が発表した雇用統計を見ると、9月の失業率は前月の6.1%から5.9%に改善した(1年前の失業率は7.2%)。また非農業部門雇用者数も、1~9月の間で月平均22万7,000人増加している(9月の増加は24万8,000人)。米国の自然失業率は5.5~6%の間にあるというのがコンセンサスなので、今やほぼ完全雇用の状態にあるといっても良さそうだ。

 ジャネット・イェレンFRB議長は労働経済学者である。彼女はこれまで、雇用統計の見方について、例えば失業率のような表層的な数値に対してやや懐疑的であった。それは、失業率が改善したといっても、一方で労働参加率が大きく低下しているからである。

 例えば、2008年末、つまり金融危機直後の労働参加率は65.8%であったが、これが今年9月には62.7%まで低下している。この間一貫して低下を続けており、

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