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相次ぐ地銀統合と消費税10%延期解散の急浮上

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 世の中は、国民の不安と裏腹に、来年10月の消費税引き上げに向けて動き出しているとしか思えない状況がいくつもある。

 その代表格が、収益環境が悪化している地方銀行の経営統合である。さらに全国紙の社説論調、また、4日から始まった内閣府のヒアリングなども方向性としては再増税で一致している(拙稿「日銀からヘッジファンド、投資銀行への大きなハロウィン・ギフト」〈2014年11月5日〉も参照)。

 政府統計を用いて精緻な議論を好む経済学者やエコノミストでさえ、消費税再増税論争になると、民主党、自民党、公明党の三党合意による法案可決と、なぜか政治的要因を持ちだしてくる。最後は安倍首相の政治的決断に委ねられていることになる。消費税再増税は、安倍政権が長期政権になるかの大きな試金石である 。

 実は金融機関の統合が久しぶりに顕在化している。

 金融業の収益はマクロ経済の動向に左右される。まずは米金融大手シティグループの日本法人、シティバンク銀行が個人向け業務の売却先を選定中である。シティグループはグローバルな戦略見直しのなかで、日本における収益の低さに見切りをつけた。

 11月7日の日本経済新聞によると、新生銀行が事実上、入札から撤回し、三井住友銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行の3行、11月6日の朝日新聞は、三井住友信託銀行と三井住友銀行の2行を有力視している。大手銀行の中で、相対的に資産規模で劣る銀行が残っている。

低収益にあえぐ地方銀行で相次ぐ経営統合

 国内経済の影響をもろに受けるのが地方銀行である。シティバンク銀行ほどではないが、国内の銀行も記録的な低金利下で利ザヤが縮小するなか、国債の運用環境も悪化し、貸出先も伸ばせていない。

 地方銀行は、メガバンクのように国際業務や証券業務からの収益に期待できない。低金利下でも手数料収入が期待できる窓口の投資信託や保険販売、ベンチャーキャピタルや企業投資ファンドの組成・出資など収益多角化の努力も業績全体に寄与するには至っていない。

 まず横浜銀行と東日本銀行が2016年春の経営統合を目指している。経営統合すれば、総資産で福岡銀行、熊本銀行、親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループを上回り、日本最大の地銀グループとなる。さらに、肥後銀行(熊本市)と鹿児島銀行(鹿児島市)が経営統合に向けた交渉に入ったことを明らかにした。実現すれば、地方銀行グループで総資産10位以内に入る。

 地方で資金需要が旺盛な優良企業は限られており、企業活動が本社所在地に限定されているわけではない。このため

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