メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

それでも私が消費税増税を支持する理由

小笠原誠治 経済コラムニスト

【ポイント】
1. 消費税増税の是非を景気と関連付けて判断すべきではない。
2. 消費税増税の是非は、財政破綻リスクの大きさで判断すべきである。
3. 日本は、国債の利回りが世界一低いといっても過信すべきでなない。
4. 経常収支の赤字転落が目前に迫っており、今後、財政破綻リスクは大きくはなっても小さくはならない。
5. ギリギリまで増税を先送りすれば、より痛みと副作用は大きくなる。
6. 財政の破綻リスクが顕在化し始めてから対応しても手遅れである。

はじめに

 2015年10月に予定されている消費税率10%への引き上げが延期されそうな雲行きになってきている。というのも、今週に入って解散風が吹きまくっているからである。率直にいって、私には増税を延期することと衆議院解散の関係が理解できないが、巷(ちまた)では消費税増税延期に関し国民に信を問うためと説明されている。

 ところで、私は増税を支持する立場にあるが、増税を支持しない立場の主張は、増税をすれば景気を悪化させむしろ税収を減少させることになるから、というようなものがほとんどである。

 では、そのような増税反対論者の主張は、どれほど説得力があるのであろうか。増税は国民に痛みを強いるものであるので、いつの時代にも増税は容易には受け入れられない。そして、増税をすれば通常は景気を悪化させる。しかし、増税は景気を悪化させるので受け入れられないというのでは、いつまで経っても財政再建などできない。そして、財政再建ができないままではいつかは財政が破綻するのである。

 政府の債務は1000兆円を超える規模にまで達しているが、このような状況がいつまで持続可能なのであるのか。一部極論を主張する者を除いては、増税を支持しない者でも、このままの状態がいつまでも続くなどとは思っていないのである。つまり、いつかは増税することもやむを得ないが、今はその時期ではない、と言うに過ぎない。

 増税を支持する者はオオカミ少年のようだと揶揄されることの多い昨今であるが、いずれにしても、このままいけば財政の破綻リスクは大きくなることはあっても小さくなることはない。増税を先送りすれば将来の負担は益々重くなるのだから早期に対応することが必要である。

増税実施の是非を景気との関係で判断すべきでない理由

 多くの増税反対派が、景気が悪い時には増税をすべきでないと言う。確かに増税は国民に負担を強いるものであるので、やるのであれば景気がいい時ほど増税を実施しやすいのはそのとおりであろう。しかし、では、景気が悪い時には絶対に増税はすべきではないのか?

 もちろん、私も一個人としてみれば、増税などまっぴらごめん。できれば、いつまでも税金を上げて欲しくはないというのが本音。しかし、これだけ高齢化が進み医療費が増えているのだから、増税なしに財政を運営していくことが不可能なこと位少し考えれば誰だって分かるはずなのだ。

 私が皆さんに考えてもらいたいことは、一旦財政が破綻した国は、その時々の経済情勢など全くお構いなしに厳しい緊縮財政を受け入れざるを得ないということである。

 近年では、例えばギリシャが事実上財政破綻を起したが、あの時、ギリシャ国民はどれほど厳しい緊縮措置をIMF等から押し付けられたかを知っている方は多いと思う。あのようなときに、緊縮財政に移行すれば益々景気が悪くなり税収が減るので緊縮財政は先送りすべきだなどという論理は全く通用しない。というのも、破綻した国が厳しい緊縮策を取ることがなければ、債権者たちを納得させることができず、そうなればその国は資金繰りが付かない状態から脱出することができないからだ。

 ちなみに、国にとって資金繰りが付かなくなるとはどういうことなのか。公務員に給料を払うことができず、年金の支給もストップし、健康保険も通用しなくなる。もちろん、それだけにはとどまらない。ありとあらゆる公的サービスが停止し、そうなれば社会は機能マヒを起こしてしまうのだ。そのことを余りにも安易に考えているのではないか。

 話を戻すが、そもそも増税をすれば景気が悪くなるのは当然のことなのだ。例えば、消費税率を5%から8%に3ポイント引き上げ、そのことによって物価が2%ほど上がるならば消費者の購買力は2%分ほど奪われる。従って単純に考えれば消費が数量ベースで、つまり実質ベースで2%ほど減少するのは当然である。

 私は、以前から増税路線を支持してはいたものの、消費税増税の結果、「景気への影響は最小限度に留まると見込まれるから」などとは一言も言ってはいない。逆に、「景気に与える影響は大きいが、しかし、そのことと将来の財政破綻のリスクを天秤にかけると、財政破綻のリスクの方がより深刻だから増税すべきだ」と言い続けてきたのだ。

 ただし、重要なことは、そうして増税によって景気に悪影響を与えたとしても、それが未来永劫続く訳ではないということだ。つまり、 ・・・続きを読む
(残り:約3087文字/本文:約5133文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

小笠原誠治

小笠原誠治(おがさわら・せいじ) 経済コラムニスト

経済コラムニスト。1953年長崎県生まれ。1976年3月九州大学法学部卒。1976年4月北九州財務局(大蔵省)入局。大蔵省国際金融局開発金融課課長補佐、財務総合政策研究所研修部長、中国財務局理財部長などを歴任し、2004年6月退官。 以降、執筆活動に従事する。著書に「マクロ経済学がよーくわかる本」(秀和システム)、「ミクロ経済学がよーくわかる本―市場経済の仕組み・動きが見えてくる」(秀和システム)、「経済指標の読み解き方がよーくわかる本」(秀和システム)、「それでもアベノミクスがダメな理由」(Yahoo! JAPAN)がある。

小笠原誠治の新着記事

もっと見る