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世間が納得しない“農協の自己改革案”

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 農協が11月6日に自己改革案をまとめた。これは、5月に規制改革会議が行った提言に端を発し、6月に政府で取りまとめられた農協改革案を受けてのものだ。政府の取りまとめでは、農協の判断を尊重することが強調されていた。

 これまで農協改革には、だれも手を付けられなかった。5月22日政府規制改革会議がまとめた農協改革案は、かつてないほど、大胆なものだった。

 第一に、農協の政治活動の中心だった全中(全国農業協同組合中央会)や都道府県の中央会に関する規定を農協法から削除する。全中は系統農協などから80億円の賦課金を徴収してきた。農協法の後ろ盾がなくなれば、全中は強制的に賦課金を徴収して政治活動を行うことはできなくなる。

 第二に、全農やホクレンなどの株式会社化である。これは、協同組合ではなくすということである。日本の農業には、農協によって作られた高コスト体質がある。肥料・農薬、農業機械の価格は米国の2倍である。全農を中心とした農協は、肥料で8割、農薬、農業機械で6割のシェアをもつ巨大な企業体である。このように大きな企業体であるが、協同組合という理由で、全農には独占禁止法が適用されてこなかったし、一般の法人が25.5%なのに19%という安い法人税、固定資産税の免除など、様々な優遇措置が認められてきた。

 本来、農協は農家が安く資材を購入するために作った組織だったのだが、独占禁止法が適用されないことで、農家に高い資材価格を押し付け、最終的には高い食料品価格を消費者に押し付けてきた。様々な優遇措置がなくなることによって、

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