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今回の総選挙に大義はあるか

700億円は十分に安い必要経費

若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院教授(経済学史)

 衆院が21日に解散され、与野党は12月2日公示、14日投開票の衆院選に向けて事実上の選挙選に突入しました。師走に行われる2年ぶりの総選挙。果たして大義はあるのでしょうか。Q&A形式で解説いたします。

解散詔書が読み上げられ、万歳する議員たち=2014年11月21日、西畑志朗撮影 拡大解散詔書が読み上げられ、万歳する議員たち=2014年11月21日、西畑志朗撮影

 Q 安倍晋三首相は、11月21日、衆議院を解散し、総選挙が12月2日に公示、14日に投票されることになりました。今回の選挙に大義はないという意見についてどう考えますか。

 A 結論からいえば、今回の選挙に大義はあると考えます。最大の理由は、この選挙が消費税引き上げの延期の是非を国民に問うものだからです。

 Q しかし、民主党も含めて他の政党は、すべて消費税の延期に賛成しています。それでも、解散総選挙をしなくてはならないのでしょうか。

 A 直前まで増税を先送りしてはいけないとあれほど強硬に述べていた民主党執行部が、延期やむなし、に変わったのは、いかに「合理的な行動」とはいえ呆れるばかりです。

 そもそも、自民党は前回2012年総選挙で、消費税増税を公約として掲げています。民主党は、2009年総選挙のマニフェストでは消費税増税を掲げていなかったのにもかかわらず増税を決め、2012年総選挙で大敗を喫しました。

 他の政党が延期に賛成しているから、という理由で総選挙をせずに延期をすることは、マニフェストに掲げていなかったにもかかわらず自民党、公明党という他の政党と増税を合意して国民に信を問わなかった民主党の轍を踏むことになります。

 それと、自民党、公明党の中には増税に賛成している人たちがいます。公明党の山口那津雄代表は、「三党合意」の当事者です。首相は彼らの支持を確実に取り付ける必要があります。さもなければ、増税延期法案を衆議院に上程したときに、身内から反対者が出ることすらあり得ます。

 Q 首相は消費税増税の11月延期を、消費税法の附則第18条、いわゆる景気判断条項に基づいて決めました。それができるのであれば、何も解散をする必要はないのではないですか。

 A いえ、やはり法律そのものを改正する必要があります。そのためには法律を新しく1本通す必要があります。

 ちなみに、景気判断条項は、民主党の中で消費税増税法案に反対した一部の議員の人たちの強硬な申し入れでできたものでした。そのとき、自民党の反応はむしろ冷淡でした。今回、安倍首相がこの条項を用いて増税の延期に踏み切ったことには、歴史の皮肉を感じますね。この条項を入れた議員の方々の貢献は、しっかりと記憶されるべきでしょう(残念ながら、大部分の議員の方々は前回2012年の選挙で落選してしまいました)。

 それでも、この条項で2015年10月からの8から10%への消費税率引き上げを阻止できるかといえば、それは無理です。法律には、2015年10月からの引き上げがしっかりと明記されています。この法律を変えない限り、引き上げは阻止できません。

 今回の選挙に大義はある、というべきでしょう。

 Q それでも、今回の解散で700億円のお金がかかるといわれています。これを無駄遣いとする声もあります。

 A 今回の解散・総選挙では、なぜか、700億円かかるという数字が突然でてきましたね。前回の選挙、あるいは前々回の選挙で、そういう数字を聞いたことがありますか?私の記憶にはありません。何か作為的なものを感じますね。

 かりに選挙に700億円かかるとしても、民意を問うために必要な経費は、無駄ではありません。民主主義を維持するための必要経費というべきでしょう。

 それと、今回の5から8%への3%分の消費税増税で、国内総生産(GDP)換算で10兆円近くのお金が失われてしまいました(日本のGDPがざっと500兆円ですので1%は約5兆円。今回の消費税増税後、潜在GDPと実際のそれとの差を表すGDPギャップがGDPの2.2%程度になっています)。

 次の増税で、2%分を上げると、単純計算で7兆円程度のGDPを失うでしょう。それと比べると、700億円は7兆円の1%程度です。7兆円を救うためとみれば、十分に安い必要経費といえるでしょう。

 Q 安倍首相は、今回の選挙は「アベノミクス選挙」である、と位置づけました。アベノミクスについてどう評価されますか?

 A それについては、別途お話ししたいと思います。


筆者

若田部昌澄

若田部昌澄(わかたべ・まさずみ) 早稲田大学政治経済学術院教授(経済学史)

早稲田大学政治経済学術院教授。1987年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院経済学研究科、トロント大学経済学大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学、ジョージ・メイソン大学、コロンビア大学客員研究員を歴任。専攻は経済学史。著書に『経済学者たちの闘い』(東洋経済新報社、2003年:増補版、2013年)、『危機の経済政策』(日本評論社、2009年:第31回石橋湛山賞)。共著に『昭和恐慌の研究』(東洋経済新報社、2004年:第47回日経・経済図書文化賞)。

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