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「個人消費の活性化で景気が良くなる」は本当か

輸出の不振や設備投資の沈静化に目を向け、サプライサイドの経済戦略を

小笠原誠治 経済コラムニスト

【ポイント】
・「GDPの6割は個人消費だから、個人消費を活性化しないと景気はよくならない」と言われることが多いが、必ずしも当たっていない。

・個人消費に力強さがないことが我が国の景気が悪い主な原因として挙げられることが多いが、原因はむしろ輸出の不振や設備投資の沈静化にある。

・GDPに占める個人消費の割合は、リーマンショック以降むしろ増大している。

・日米の年間輸出額の推移を見てみると、米国はリーマンショック以降輸出が過去のピーク時を既に大きく上回っているのに、日本は円安により円建ての輸出額が膨らむ効果があるのにも拘わらずまだピーク時のレベルを回復していない。

・最大の支出項目である個人消費が活発化すれば、確かにそれが生産を刺激しGDPを増加させる可能性があるが、仮に支出(消費)の増加分の全てが輸入製品に向けられれば、GDPの増加には殆どつながらない。

・景気が悪いことの最大の要因が外的なものにあれば、消費刺激策は景気対策としてそれほど有効でない。

はじめに

 今回の選挙戦においても、「GDPの6割は個人消費だから、個人消費を活性化しないと景気はよくならない。だから、個人消費を活発化する政策が必要である」という趣旨の主張を聞かされることが多かった。恐らく、このような発言を聞くと、それはそうかも知れないと思う国民が多いのではなかろうか。

 しかし、一見もっともらしく見えるこの意見も、冷静になって考えると全く説得力のないものであることが分かる。

本日は、何故この仮説が説得力を有するものではないかを解明する。

リーマンショック以降の名目GDPの推移

 表をご覧いただきたい。

(注)上の表をみると、GDP(国内総生産)の額は1四半期で500兆円前後になっているが、これは1四半期で実際にそれだけの付加価値を生み出したということではなく、年間ベースに換算するとそうなるということに注意すべきである。(注)上の表をみると、GDP(国内総生産)の額は1四半期で500兆円前後になっているが、これは1四半期で実際にそれだけの付加価値を生み出したということではなく、年間ベースに換算するとそうなるということに注意すべきである。

 四半期ベースの我が国の名目GDPをみてみると、ピーク(2001年以降)は2007年4-6月期の515.2兆円であるが、直近の2014年7-9月期は484.3兆円となっており、約7年間で30.8兆円ほど減少しているのである。

 では、個人消費、設備投資、そして輸出という3つの主要支出項目の推移はどうなっているのであろうか。つまり、何が一番名目GDPを減少させているのか?

 個人消費は、2014年4月の消費税増税の影響で過去3四半期ほど不規則な動きを示しているが、それでもほぼ過去のピーク時の水準を回復していると言える。それに対し、民間設備投資と輸出をみると、明らかにまだ過去のピーク時の水準にまで回復していないのである。

 また、GDPに占める個人消費の割合をみれば、直近の2014年7-9月期は60.6%となっているが、リーマンショックを経て、その割合はむしろ増加傾向にあり、その意味からも消費が停滞していることが景気の悪いことの最大の原因でないことが分かる。

日米の輸出額の推移

 次に、我が国の輸出がどれほど回復してないかを知るために、

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