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[17]「高度プロフェッショナル制度」3つの罠

過労死防止、女性活躍、子育て支援に逆行の恐れ

竹信三恵子 和光大学現代人間学部現代社会学科教授

 「今後の労働時間法制の在り方」についての報告が13日、厚生労働省の労働政策審議会でまとまった。これに基づいて、いまの通常国会に法案が提出される見込みという。ここでは、労働側の合意が得られないまま、「高度プロフェッショナル制度」が盛り込まれた。

 労働基準法の1日8時間労働の規制から一定の条件の働き手を外そうというもので、政府自身が打ち出している過労死防止、子育て支援、女性活躍には逆行しかねない制度だ。にもかかわらず反対の声は、一般の人々の間ではさほど盛り上がっていない。それは、そこに、いくつもの言葉の罠が仕掛けられているからだ。

「成果主義なら早く帰れる」の罠

 働き手を労働時間規制による保護から外す制度は米国では「ホワイトカラーエグゼンプション(ホワイトカラーの免除)」と呼ばれ、日本でも約10年前、国会に提出される動きが出た。これには「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」との批判が高まり、政府は断念したが、第二次安倍政権下で「新しい労働時間制度」として復活、1月23日付日本労働弁護団の声明では「長時間労働野放し法」とも呼ばれている。

 だが、巷での反対の動きはどこか鈍い。大学では学生から、「新しい労働時間制度ができれば働く人は早く帰宅できると別の先生の授業で教わった」と言われた。女性の活躍推進に熱心な大手企業元役員の女性からも、「女性は能率よく働く。新しい労働時間制度ができて成果で仕事が評価されれば早く帰れる」と言われた。こうした解釈の横行の背景には、この制度案に埋め込まれたいくつもの言葉の罠がある。

 たとえば今回の報告では、「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え」ることを目的に、「一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者」を対象として「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル労働制)」を設けるとある。

 だが、その中身は、 ・・・続きを読む
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筆者

竹信三恵子

竹信三恵子(たけのぶ・みえこ) 和光大学現代人間学部現代社会学科教授

和光大学現代人間学部教授。東京生まれ。1976年、朝日新聞社に入社。水戸支局、東京本社経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)などを経て2011年から現職。著書に「ルポ雇用劣化不況」(岩波新書 日本労働ペンクラブ賞)、「女性を活用する国、しない国」(岩波ブックレット)、「ミボージン日記」(岩波書店)、「ルポ賃金差別」(ちくま新書)、「しあわせに働ける社会へ」(岩波ジュニア新書)、「家事労働ハラスメント~生きづらさの根にあるもの」(岩波新書)など。共著として「『全身○活時代~就活・婚活・保活の社会論』など。2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞。

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