格差の時代に有効な社会保障の処方箋はどこに
2015年02月19日
トマ・ピケティ『21世紀の資本』がベストセラーになっている。WEBRONZAでも、吉松崇氏はじめ多くの方が様々な視点から論評しているが、私が疑問に思うのは、ピケティ氏が上位1%または10%の人々の所得のみを問題にしていることだ。私は、富が正当な手段で蓄積されたものなら、いくら富んでも構わないではないかと思う。むしろ問題は、下位1%または数%の貧困の問題ではないだろうか。
社会を分断させるのは、上位の富よりも下位の貧困であって、自国生まれのテロリストという問題も貧困から生まれたものではないだろうか(ただし、テロリストもドメスティックバイオレンス夫もいじめっ子も、何をやっても相手の方が悪いと言うので、日本政府がうまくやればテロは避けられたという論調には私は組みしない)。
それに対して、ベーシックインカム(BI)は、直接貧困に焦点を当てている。健康で文化的な最低限度の生活を維持できる所得、BIを全員に給付すれば貧困は解消できるという議論である。
これについては、21世紀の最初の10年の後半に議論が盛り上がった時期があった。解説本や翻訳書が立て続けに出版され、ライブドア元代表取締役社長の堀江貴文氏、楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元氏、サントリーHD代表取締役社長(前ローソン代表取締役社長)の新浪剛史氏など多彩な人々がBIを支持したことが、多くの人々の関心を呼んだ。ネットでも雑誌でも、BIに関する議論が見られるようになった。
その後、議論は低調になったようだ。その理由は、BIは巨額の財政支出をともなうという誤解と、貧困はお金のないことではなく生活を巡る根深い問題なのだという考えが広がったからだろう。確かに、BIは巨額の財政支出を伴う。
しかし、同時に、巨額の支出をしている社会保障関係の支出を削減できる。また、所得から扶養控除や基礎控除を除いてから課税するのと、BIを給付してこれらの控除なしで課税するのとは同じような結果になる。このことをマクロ的に
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